GLP-1受動体作動薬 exenaitde は、TNF-αシグナリング抑制を介して、脳内のインスリン抵抗性を改善させる。

アログリブチンの全国講演会で聞いた論文です。
エクゼナチドが、アルツハイマー病のモデルマウスで、脳内のインスリン抵抗性を改善させ、認知機能も改善させた。インクレチンが認知機能も改善させる可能性を示している。

まとめ
アルツハイマー病では、神経細胞でインスリン受容体以下のシグナルが抑制されている。
 
そのメカニズムは、アミロイドβ が、TNF-α/JNK (c-Jun amino-terminal kinase) 経路を介して、IRS-1で複数のセリン残基をリン酸化し、その結果、IRS-1のチロシン残基リン酸化を抑制するためである。
 JNK 活性が上がると、神経疾患において、axonal transport が低下する。
 
Exendin-4は、Blood-brain-barrier を通過する。
 アミロイドβ が蓄積するアルツハイマー病のモデルマウスに、exendin-4 を腹腔内に3週間投与すると
①アミロイドβ oligomer 投与時の、脳内のIRS-1pSer636、IRS-1pSer312、pJNKのリン酸化レベルの低下、IRS-1pThy465のリン酸化レベルの増加
 
②認知機能の改善
 
③脳内のアミロイドプラークと皮質のsoluble Aβの減少が認められた。
 
アミロイドβ を減らす治療は、現在のところefficacy とsafety が明らかでない。
 アルツハイマー病に対する点鼻インスリンは、アミロイドβ oligomer によるインスリン受容体の損失や神経細胞のoxidative stress、synapse deterioration を予防する。
しかし、アルツハイマー病でインスリン受容体はすでに神経細胞表面から減少している。
GLP-1受動態作動薬のようなインスリン受容体を経ない治療は、アルツハイマー病を予防および治療するのに安全で効果的である。
 
感想
この論文を読んで、インスリン点鼻が認知症の治療効果を示すメカニズムがやっと理解できてきました。
GLP-1がTNF-α以下のシグナリングを抑制して心筋の保護作用を示すことは別の総説にありました。
GLP-1作動薬が、TNF-αシグナル抑制を介して、中枢でインスリン受容体以下のシグナル抑制を解除する働きがあるのは非常に興味深いです。
 
1. An anti-diabetes agent protects the mouse brain from defective insulin signaling caused by Alzheimer’s disease–associated Aβ oligomers J Clin Invest. 2012;122(4):1339–1353. doi:10.1172/JCI57256. 
 
2. 2. Glucagon-like peptide-1 receptor is involved in learning and neuroprotection Nature Medicine 9, 1173 - 1179 (2003)
 
3. 吸入インスリンが、アルツハイマー病、mild cognitive impairment (MCI) を改善する。
 
4. インクレチンの心保護効果


http://www.jci.org/articles/view/57256
JCI57256_f9.jpg

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Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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