RAS阻害薬は、血圧正常、正常アルブミン尿の1型糖尿病患者では、微量アルブミン尿への進展予防効果を認めない。

Renal and Retinal Effects of Enalapril and Losartan in Type 1 Diabetes. N Engl J Med 2009;361:40-51.http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/361/1/40
かなりの情報量のある論文で以下は要約です。

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人の血圧正常、正常アルブミン尿、網膜症を認めない1型糖尿病患者をエナラプリル (20 mg/day)、ロサルタン(100 mg/day)、プラセボへ振り分け5年間フォローアップ。プライマリーエンドポイントは、メサンギウム細胞で占められた糸球体ボリュームの変化。網膜症のエンドポイントは、重症度分類の2段階以上の変化。

プライマリーエンドポイントは、3群で有意差なし。5年間で、微量アルブミン尿出現は、プラセボ(6%)、ロサルタン(17%,p=0.01))、エナラプリル (4% p=0.96)。

カンデサルタンを用いたDIRECT study でも、1型、2型糖尿病で、4.7年のフォローアップで正常アルブミン尿からの進展予防効果は認めない。カンデサルタンの方がプラセボに比べ微量アルブミン尿の出現が多いということはなかった。1)
GFR減少率は、健常な同年代に比べ2倍であるが、3群で同等。正常アルブミン尿でもGFR低下が認められれば、腎組織はより悪いことがわかっている。
RAS阻害薬は2型糖尿病においては、間質のexpansionが抑制されることが示されているが、今回のスタディでは3群とも間質のvolume 50%以上増加した。進行した腎症と早期腎症の違いがあるのかもしれない。2型糖尿病では高血圧、肥満、他のアルブミン尿のリスクなどもあることが関連しているのかもしれない。今回のスタディでは腎の2次的な構造変化もさまざまで、腎症の進展予測は難しい。1型糖尿病で、正常血圧、尿アルブミン正常でリスクの高い症例であれば違った結果になったのかもしれない。
血圧の変化とは独立して、重症度分類の2段階以上悪化抑制効果はエナラプリル65%、ロサルタン70%であった。Discussion には、血圧の効果も否定できずとの記載あり。網膜症の進展予防について、AngiotennsinIIは眼でも産生され、網膜症のリスクとなっているので、RAS阻害薬の直接効果かもしれないということでした。

1)
Effect of Candesartan on Microalbuminuria and Albumin Excretion Rate in Diabetes: Three Randomized Trials Ann Intern Med July 7, 2009 151:11-20;
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糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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