β細胞の脱分化 (dedifferentiation) と再分化 (Redifferentiation)

Foxo1 β細胞のidentity を決める重要な転写因子で、Foxo1が欠損したβ細胞では、インスリンなどβ細胞特異的な遺伝子発現が低下し、グルカゴンが発現され、β細胞がα細胞へ変換する dedifferentiationがおこる。またストレス下のβ細胞でも同様の現象が認められる。
Dedifferentiation したβ細胞をRedifferentiation させることができれば、糖尿病の治療に役立つのではないかというレビューです。(NEJM 2月7日)

まとめ
高血糖では、Foxo1の発現が低下する。
β細胞特異的Foxo1欠損マウスは、healthyだが加齢と妊娠により高血糖となる。プロインスリンをprocessing するPCSK1の発現も低下する。
 
遺伝子的にラベルする方法で β 細胞を追跡した結果、Foxo1が欠損したβ細胞は、死滅するのではなくインスリン、GLUT2 、グルコキナーゼ、主要な転写因子遺伝子の発現を低下させる。さらにβ細胞はグルカゴンを発現するようになり、α-cell mass が増加する現象が認められる。これらの結果は、β細胞がcell identity を喪失していることを示す。
 
非肥満、1型糖尿病のモデルラットでも免疫的破壊を逃れるためインスリンの発現を失うことが報告されている。
Talchai らは、レプチン受容体が欠損したdb/db マウス、筋肉と脂肪細胞特異的にインスリン受容体を欠損させたマウスで検討し、beta-cell failure で認められるdedifferentiation が一般的なメカニズムであることを明らかにした。
 
現在の考え方では、β細胞に酸化ストレス、ERストレスがかかると不完全にプロセスされたプロインスリンの分泌が増加する。これが続くとβ細胞はapoptosis を起こす。
 
Talchai らはストレス下のβ細胞は、MafAやインスリンをプロセスする酵素など、β細胞特異的な遺伝子発現を減少させ、dedifferentiation を起こすということを示した。ストレス下のβ細胞でプロインスリンが増加することも説明しうる。
 
Dedifferentiation を起こしたβ細胞では、embryonic progenitor-cell のマーカーであるNeurogenin3 が増加し、グルカゴン、ソマトスタチンを分泌するようになる。
 
興味深い疑問点
①Dedifferentiationは、ヒトでも起こるのか? ヒトのβ細胞がidentity を失った後、trace する方法を開発する必要がある。
②Dedifferentiation のTriggerは何か。慢性的な高血糖によりFoxo1 の不活化によるとしているが、このpathway の正確なcomponent は明らかでない。
③Dedifferentiationは、避けたり、元に戻したりできるのか。(Redifferntiation)
 
感想
ストレス下β細胞がグルカゴンを発現してα細胞にdedifferentiation するという概念は新しい。
高血糖下ではインスリン分泌も下がってしまうという悪循環となるがβ細胞がα細胞に変わってグルカコンまで分泌してしまうことも関与しているのか?
インスリン分泌を復活させる実践的な方法は、インスリン治療などで血糖値を、正常化することだと思います。
Foxo1の発現をあげるような治療ができれば、α細胞にdedifferentiation してしまったβ細胞を元にもどすことができるのか?
 
 
関連記事

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
110位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
14位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム