インクレチン治療とα細胞過形成、microadenoma

インクレチン治療歴のある脳死ドナー8例で、膵全体のmass が増加し、膵β細胞量は増加している。
α細胞の過形成も伴い、8例中1例にグルカゴンを産生するneuroendocrine adenoma が認められた。(Diabetes online first)
要約
インクレチン治療では、膵β細胞のregeneration の期待と、膵増殖を促進するという有害な作用に対する懸念がある。

脳死のドナー、インクレチン治療 (治療歴1年以上)8人(ジャヌビア7人、バイエッタ1人)、インクレチン非治療12人、非糖尿病のコントロール14人(年齢、性別、BMIを二つの治療法でマッチさせた)での検討
 
膵全体のmassとしては、インクレチン治療で40%増加、外分泌腺の増殖とdysplasia (膵管上皮のneoplasia) を伴っている。
 
インクレチン治療では、α細胞の過形成が認められ、8例中3例にグルカゴンを発現するmicroadenomaが、1例にはneuroendocrine tumor (1.5cm大) が認められた。シタグリプチンとエクゼナチドは同じようなα細胞過形成を認める。
 
糖尿病では非糖尿病に比べβ細胞量は60%減少、しかしインクレチン治療では、糖尿病非インクレチン治療に比べ、β細胞量が6倍に増加していた。細胞数の増加であり、β細胞の大きさは3%増えているのみ。
 
糖尿病では、インスリンとグルカゴンが共染色される endocrine cell が増加しているが、インクレチン治療ではさらに増加する。この細胞は、functionary immature である。
 
α細胞、β細胞ともreplicationはふえていない。
グルカゴン分泌やシグナリングを抑制すると、グルカゴンを発現するneuroendocrine tumorが産生されることが報告されている。2)
脳死ドナーだけでなく今後手術検体でも検討が必要。
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感想
臨床的にはインクレチン治療が、α細胞の過形成およびグルカゴンを産生するmicroadenoma 生じさせうること、膵管上皮内、膵管を取り囲んでα細胞が増加している所見があり、膵炎の原因となる可能性について言及されている。
 
α細胞、β細胞量ともに増加しているメカニズムは、α細胞、β細胞ともreplication は変化ないので、α細胞ではprogenitor cell からα細胞へ変換、β細胞では、GLP-1がヒトでβ細胞のproliferationを起こすことは未だに示されていないため3)、インクレチンによるapoptosis の抑制のためとしている。
 
インクレチン関連薬はβ細胞量を増やし非常に有用ですが、長期使用にはまだ不明な点が多く、やはり2型糖尿病のfirst line はメトフォルミンなのだと再認識しました。
 
1. Marked Expansion of Exocrine and Endocrine Pancreas with Incretin Therapy in Humans with increased Exocrine Pancreas Dysplasia and the potential for Glucagon-producing Neuroendocrine Tumors
Alexandra E Butler, Martha Campbell-Thompson, Tatyana Gurlo, David W Dawson, Mark Atkinson, Peter C Butler  Published online before print March 22, 2013, doi: 10.2337/db12-1686 Diabetes March 22, 2013
 
ヒトで、グルカコン受容体のシグナリングを不活化するmutation (P86S) が存在すると高グルカゴン血症とα細胞の過形成がおこる。
グルカゴン受容体欠損するマウスでは、グルカゴンを分泌する膵内分泌腫瘍ができる。糖尿病治療でグルカゴンシグナルを完全にブロックすることは安全でないかもしれない。
 
In vitroでは、リラグルチドが、ラットの膵β細胞を増殖させるがヒトのβ細胞を増殖させることはできはなった。
 

 
 


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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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