腸管局所のDPP4活性の低下は血糖値を改善させる。

リナグリプチンの講演会で提示された論文、DPP4阻害薬はそれほどGLP-1濃度を上昇させないが、血糖コントロールを改善させる理由が示されていた。
マウスに非常に低濃度のシタグリプチンを投与すると、血中活性型GLP-1濃度、DPP4活性を変えずに糖負荷試験の血糖値を改善させる。低容量のシタグリプチンが、腸管局所でDPP4活性を低下させることにより、GLP-1受容体が刺激され、迷走神経を活性化するというメカニズムが考えられている。またDPP4により生じるペプチドが血糖値を悪化させているため、DPP4活性が低下しペプチド産生が減ることも血糖値改善に関係している。1)


まとめ
マウスに4, 40, 80, 120, 400μgのシタグリプチンを投与、
シタグリプチン40μgは、血中のDPP4活性、門脈血の活性型GLP-1 濃度を変えないが、糖負荷試験の血糖値を低下させる。

シタグリプチン40μgは、薬理学量であるシタグリプチン40mgと同等に十二指腸、空腸、回腸のDPP4活性を低下させる。

シタグリプチン40μgは迷走神経の活動性を増加させる。
DPP4により生じるペプチド(GLP-1 からHis-Ala、GIPからTyr-Ala) がインスリン分泌を抑制し糖負荷試験の血糖を悪化させる。DPP4阻害薬は腸管局所のDPP4活性を阻害し、インクレチン受容体を活性化、迷走神経の活動性を増加させて血糖値を改善させる。1)
 
1)に対するコメント
DPP4阻害薬は食後のGLP-1濃度を1.5から3倍に上昇させる。GLP-1の半減期は1から5分と短い。
GLP-1はsmall and short-lived functions であるのに、β細胞のような標的組織で、十分な効果を示すことができるのか。門脈壁は密に神経支配されている (densely innervated) ため、血糖制御に必要なGLP-1濃度が、門脈内では血中よりはるかに少ない濃度であるというモデルがある。
 
腸管L細胞で分泌されたGLP-1の50%が門脈に到達する前にDPP4により不活化されるため、腸管のリンパ節でGLP-1濃度は、門脈よりさらに10倍から20倍高濃度となっている。
循環血中のDPP-4濃度に影響しない低容量のシタグリプチン投与が、腸管のDPP4活性を低下させる。野生型マウスでは糖負荷試験の血糖値を改善させ、GLP-1受容体欠損マウスでは改善させなかった。

低容量シタグリプチンは、迷走神経の活動性を増加させる。
DPP4により、GLP-1から分割されたHis-Ala peptide がインスリン分泌を抑制するということは新しい知見。2)
 
感想
DPP4阻害薬がGLP-1作動薬ほどGLP-1濃度をあげないが血糖コントロールを改善してくる理由として受け入れやすい内容でした。腸管上皮、リンパ節では末梢血中で測定するより高い濃度のGLP-1があり、DPP4の活性変化が神経支配を介して血糖値を改善することができる。
GLP-1が腸管で分泌されるため、経口薬であるDPP4阻害は吸収の場所で作用する利点がある。しかも低容量で腸管DPP4活性を低下させ、迷走神経の活動性を上げて血糖値を改善させる。
DPP4により生じるペプチドも血糖値を悪化させている可能性がある。
清野裕先生のご講演でした。非常に勉強になりました。




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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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