β細胞からα細胞への転換ではArxが key transcriptional factorとなっている。

ヒトの培養膵島で、β細胞からα細胞へ転換がおこる。転写因子Arxを抑制するとα細胞への転換が抑制される。Arx は、β細胞からα細胞への転換では、Arxがkey transcriptional factorとなっている。

まとめ1)
ヒトの膵島を単一細胞に分離し、アガロースゲル上で培養すると凝集し、インスリン陽性細胞は辺縁に、グルカゴン陽性細胞は中心にみられる。4日以内でインスリン陽性細胞の割合は有意に減少、インスリン、PDX-1、MafA遺伝子発現は低下。グルカゴン陽性細胞は増加、Arx発現が増加する。Lineage tracing system でβ細胞からα細胞への変換が示された。
 
β細胞からα細胞へ変換した細胞では、インスリン顆粒を認めず (beta-cell degranulation) 、グルカゴンを発現し、β細胞特異的な転写因子である、Pdx1 Nkx6.1が発現している。
 
レンチウイルスでshort hairpin RNA を導入し、Arx 発現を抑制すると、凝集した膵島内でインスリン陽性細胞が2倍に増加、グルカゴン陽性細胞が40%低下する。
 
β細胞からα細胞への転換では、Arxがkey transcriptional factorとなっている。
α細胞とβ細胞は共通のneurogenin3 陽性細胞から分化する。
 
感想
糖尿病ではβ細胞量が減少しα細胞が増加しているということは既に知られていた。2)
β細胞がインスリン産生を止め、特有の転写因子の発現を低下させ、グルカゴン陽性細胞に転換しているという仮説を裏付ける結果が続いている。3)
膵β細胞の再生の基礎研究では、β細胞からα細胞への転換を妨げる方法を探索し、それによりβ細胞量を維持し、増加させられるのか検討される方向にしばらく進みそうです。
 
1. Conversion of mature human β-cells into glucagon-producing α-cells Published online before print April 8, 2013, doi: 10.2337/db12-1001  

2. Structural and Functional Abnormalities in the Islets Isolated From Type 2 Diabetic Subjects Diabetes March 2004 vol. 53 no. 3 624-632
2型糖尿病の臓器移植ドナー14例、糖尿病のないドナー14例の膵島の比較。2型糖尿病では膵島量が減少256260 islet equivalents vs. 597560 islet equivalents
膵島は小さくグルカゴン陽性細胞の比率が高い。
 
3. Pancreatic β Cell Dedifferentiation as a Mechanism of Diabetic β Cell Failure Cell, Volume 150, Issue 6, 1223-1234, 14 September 2012

4. Maintenance of β-Cell Maturity and Plasticity in the Adult Pancreas Developmental Biology Concepts in Adult Physiology doi: 10.2337/db11-1361 Diabetes June 2012 vol. 61 no. 6 1365-1371

5. The homeodomain-containing transcription factors Arx and Pax4 control enteroendocrine subtype specification in mice.
ArxとPax4の比が、α細胞への分化に重要
 
shRNA (wikipedia)

マーカー(特異的転写因子)3)
α細胞: Arx, Pax6, Brn4
 
β細胞: PDX-1, MafA, Nkx6.1
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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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