SIRT1遺伝子変異は1型糖尿病を発症させる。

単一遺伝子が、自己免疫性1型糖尿病を発症させることを示した初めての報告、これまで単一遺伝子変異がインスリン治療を必要とする糖尿病を発症する報告はあるが (Wolfram syndromeなど)、自己免疫との関連で1型糖尿病を起こすものは報告されていなかった。

まとめ1)
発端者は26歳男性、急性発症の1型糖尿病の診断を受け、非常にまれで濃厚な1型糖尿病の家族歴を有していた。(sister、父、父方いとこが早期に1型糖尿病の診断となった。さらに潰瘍性大腸炎、他の自己免疫性疾患の家族歴があった。) 
genotyping と遺伝子シークエンスにより、SIRT1遺伝子変更がこの家系にみられる自己免疫疾患のindicator となっていることが明らかとなった。
 
SIRT1遺伝子は加齢に伴う疾患から守る働きがある。なぜSIRT1遺伝子変異が1型糖尿病をおこすのか明らかにするためにこの家系で認められた遺伝子変異を1型糖尿病のモデルマウスのβ細胞に発現させた結果、β細胞を破壊するメディエーターがさらに産生するようになった。正常マウスでSIRT遺伝子を欠失させると膵島破壊を伴った糖尿病発症率が上昇した。
 Dr. Donathは、SIRT1遺伝子のmutationが、1型糖尿病に関わる免疫系を活性化し、β細胞障害が起こると推測している。
 
感想とこれまでの報告
単一遺伝子が自己免疫性1型糖尿病に関わるサイトカイン分泌を促進することははじめて示された。またその遺伝子が加齢で注目されていたSIRT1遺伝子だったのは驚きです。
 
1. JDRFの記事 First Single Gene Mutation Shown to Result in Type 1 Diabetes
 

MIN6に変異SIRT1をトランスフェクションしINFβで刺激するとiNOSの発現がコントロールより大きい。
SIRT-/- マウスをStreptozotosin で処置し糖尿病を誘導するとコントロールマウスより高血糖となる。
SIRT1-/-マウスが、自己抗体陽性となり、SLE様の症状を示す。
SIRT1はT細胞の活性化に重要
 
60歳までで一卵性双生児の一方は、65%で糖尿病を発症
1型糖尿病で自己抗体陽性の一卵性双生児では、二人とも糖尿病を発症するリスクは78%
 
5.Genetic liability of type 1 diabetes and the onset age among 22,650 young Finnish twin pairs: a nationwide follow-up studys. Diabetes 2003 Apr;52(4):1052-5.
フィンランドの報告、双生児の両方が1型糖尿病を発症するのは、一卵性双生児 42.9%、二卵性双生児 7.4%

6. Genetics of Type 1 Diabetes: What's Next? Diabetes. 2010 July; 59(7): 1561–1571.
HLA遺伝子、インスリン遺伝子と1型糖尿病の関連は早期から報告されていた。Genome-wide association study で、新規に1型糖尿病との関連遺伝子が報告されたが、多くの遺伝子のオッズ比は1.5以下。(オッズ比の図がのっています。)

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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