低血糖と糖尿病(ADA workshop のレポート)

低 血糖についてADA workshop のリポートです。低血糖の認知機能低下について良く書いてありました。DCCTの登録者のように合併症のない1型糖尿病で、重症低血糖が18年後の認知機 能低下と関連していない。ACCORD-MIND でも低血糖の頻度が3倍高い強化療法群は従来療法群に比べ認知機能に差がなかった。可逆性の重症低血糖が、将来の認知機能に結びつくという evidence はないようです。


まとめ
機器の正確性の限界を考慮して、自己血糖測定器あるいはCGMの血糖値が <70 mg/dl で低血糖とする。
血糖値18mg/で、脳内のエネルギー不足 massive energy failureとなりneural necrosis が起こる。血糖値50-65 mg/dlで一時的に認知機能低下がおこる。1)
 
しかし大人も子供も、頻回の低血糖が brain structureに与える影響はほとんどないとされている。2)
DCCTの強化療法では、重症低血糖があったが、フォローアップスタデイで強化療法と従来療法で、18年後に認知機能の差はない。1, 2)
 
ACCORD-MIND (Memory in Diabetes) study では、強化療法は従来療法に比べ低血糖の頻度が3倍であったが、40ヶ月後の認知機能スコアは同じ。
 
1型糖尿病、2型糖尿病ともに低血糖は死亡原因となりうる。
最近の4つのレポートでは、1型糖尿病で低血糖による死亡が4%, 6%, 7%, 10%と報告されている。
 
運動時の低血糖予防
運動前に血糖が降下傾向であれば補食をする。血糖値コントロールが良好で運動に伴った低血糖がある患者では、運動を計画した日のインスリンをあらかじめ調節することもよい。
 
Medical adjustment
Regular insulin は超速攻型アナログ製剤に、NPHは持効型製剤 (ランタス、レベミル) へ変更する。
コーヒー、お茶など xanthine beverage は低血糖を予防する。
CGMを使って血糖値144mg/dl をターゲットとして低血糖を予防すると、低血糖クランプ時の epinephrine 反応が改善する。1, 3)
毎食前、就寝前など頻回の血糖測定を推奨。低血糖関連自律神経障害 (hypoglycemic-associated autonomic failure, HAAF)がある場合は午前2時、午前5時の血糖測定を週3回おこなってみる。
 
低血糖への対処法 グルコース15g服用後、15分後に血糖測定、低血糖なら繰り返す
(日本の糖尿病治療ガイドではグルコース5−10gとり、15分後、再服用。)
 
感想
お茶、コーヒーは交感神経刺激作用があり、低血糖予防としてコンセンサスがあるようです。
運動前にNPH、レギュラーインスリンを使うのは講演会で聞いたことがあったが、アスリートには行われていることのようです。低血糖がQTc interval prolongationと関連し突然死の原因となりうることは報告されている。
低血糖に低酸素脳症を伴うと不可逆的なダメージとなりうるが、可逆性の重症低血糖が後に認知機能障害をきたすことはないことが分かりました。
 

DCCT study は、1型糖尿病1441人、登録時平均年齢27才、18年後の認知機能検査
40%が少なくとも1回の低血糖昏睡を経験していた。重症低血糖と18年後の認知機能は関係しない。
厳格なコントロールによる合併症予防を推奨しています。
 
"Within the aforementioned limits, we can be confident that although acute hypoglycemic events can be dangerous at the time they occur, recurrent severe episodes associated with intensive diabetes therapy, as administered in the DCCT, do not appear to have long-term adverse effects on the cognitive capacity of patients with type 1 diabetes. This conclusion lends further support to the use of intensive diabetes therapy to reduce the long-term risks of retinopathic, nephropathic, neuropathic, and cardiovascular complications in type 1 diabetes."
 
ACCOR study の強化療法と従来療法で40ヶ月後の認知機能スコアに差はない。Total brain volume は、強化療法が従来療法より大きい。 (Favorable effect)
 

低血糖を予防するとepinephrine の反応が改善する。
CGMで、血糖108 mg/dl で低血糖の対応し血糖144mg/dl をターゲットとする。4週後に血糖値を40分間、50 mg/dl にクランプする Hypoglycemia clump study で、コントロールに比べ、epinephrine の反応が良い
 
重症低血糖ではQTc intervalが延長する。→突然死の原因となる。
 
 
 

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プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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