1型糖尿病の発見 (The Discovery of Type 1 Diabetes)

Lancet のDr. Gale の記事、「2型糖尿病は、heterogeneousな病態を含んでおり、すべてにフィットするガイドラインは難しい。2型糖尿病特有の特発性高血糖は疾患と考えるのはやめて、肥満、高血圧、高血糖、高脂血症のphenotype に対応した結果と考えたらどうでしょう。」という radical な意見でした。1)
その記事の中に、1型糖尿病と2型糖尿病がはっきり区別されたのは、1970年代であるという記載がありました。
それは意外に最近の事だったことに気づき、元論文2)を読んでみました。

まとめ
膵島炎の用語がはじめて使われたのが1940年、若年発症糖尿病の膵島にみとめられた。
 
1951 年、Lister は糖尿病が二つのグループに分けられると記載。
「若く、やせていて、正常血圧で非動脈硬化性、通常は急性発症となるグループと、より年をとり肥満し高血圧をともなった動脈硬化性で通常は潜在性 (insidious) に発症するグループがある。仮に type I 、 type IIと名付ける。」

These observations were taken further by Lister et al. (13), who noted in 1951 that there are “two broad groups of diabetics—the young, thin, non-arteriosclerotic group with normal blood pressure and usually an acute onset to the disease, and the older, obese, arteriosclerotic group with hypertension and usually an insidious onset. [...] These types we have provisionally designated type I and type II, respectively.” 
 
1976年、Listerのco-worker であったCudworth が引用するまで、type I 、type II という用語は使われることはなかった。
 
1950年代に自己免疫という概念が示され、1970年代にはいって若年発症糖尿病が自己免疫をベースしていることが認識されてきた。
1963年、インスリン自己抗体がインスリン未治療の糖尿病患者で報告された。
1974年、Islet-cell antibody (ICA) の報告、 65人の若年発症糖尿病で、5人がICA 陽性、すべてアジソン病があり、4人は甲状腺疾患を有していた。(1992年、これらの患者の膵β細胞特異的なICA 抗体染色は、高いGAD抗体値で説明されることが明らかとなった。)
 
1976年、マウスで、streptozotocin (STZ) の頻回注射が膵島炎を誘発すること、BB ラットが非肥満で、糖尿病を発症、インスリン欠乏、ケトーシスを起こすことが報告された。(NOD マウスが使われるのは1980年代にはいってから。)
 
1979年、NDDG により、Type I, IDDM とType II, NIDDM およびその他の糖尿病に分類された。
type I, type II は、病因 (Etiology) による分類、IDDM、NIDDMは病態 (Pathophysiology) による分類となっている。
1997年、ADAの新分類で、病態に基づくIDDM、NIDDM は削除し、type I, type II は Type 1、Type 2というアラビア文字での表記に変更となった。
 
感想
ICAの発見、STZによる膵島炎の誘導、糖尿病モデルBBラットが開発されたことなどにより1974年から1976年の間に若年発症糖尿病が自己免疫であることが広く認識されるようになった。糖尿病という大きな分類から分かれて、病因分類としての1型糖尿病が誕生したということです。
 

3. Antibodies to pancreatic islet cells in insulin-dependent diabetics with coexistent autoimmune disease. MacCuish AC, Barnes EW, Irvine WJ, Duncan LJP Lancet :1529 -1531, 1974 
 
4. Islet cell antibodies in diabetes mellitus. Lendrum R, Walker G, Cudworth AG, Theophanides C, Pyke DA, Bloom A, Gamble DR: Lancet :1273 -1276, 1976 
 

6. Cudworth AG: The aetiology of diabetes mellitus. Br J Hosp Med 16:207 -216, 1976
 


9. The Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus Report of the Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus Diabetes Care July 1997 20:1183-1197;doi:10.2337/diacare.20.7.1183
 
 

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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