低血糖に由来する自律神経障害(2)(Hypoglycemic-associated autonomic failure)

HAAFのレビューです。先行する低血糖は、交感神経の活動性を低下させる。グルカゴン分泌不全は神経支配とは独立した、膵島内インスリンシグナルの欠乏が原因と考えられている。一般的に使用可能なのはアミノ酸、カフェインくらいですが、拮抗ホルモン分泌低下を防ぐ薬剤も報告されている。

低血糖に由来する自律神経障害(Hypoglycemic-associated autonomic failure)は、拮抗ホルモンの分泌低下と低血糖の無自覚によりおこる。
 
<拮抗ホルモンの分泌低下 Defective glucose counter-regulation>
低血糖時にα細胞のグルカコン、副腎髄質のエピネフェリン分泌反応が低下している
1型糖尿病でアミノ酸によるグルカゴン分泌は保たれている。
移植膵、脊髄損傷患者の膵、単離膵島でグルカゴン分泌は正常なので神経支配とは無関係。
膵島内のインスリンシグナルが欠乏していることが原因。
グルカゴン抑制作用があるソマトスタチンが、過分泌となっている可能性は除外できていない。 
 副腎髄質のエピネフェリン分泌は交換神経支配による。
 
<低血糖の無自覚 Hypoglycemic unawareness>
低血糖の症状が主に交感神経副腎反応の低下 (Attenuation of sympathoadrenal responses) 、とくに交感神経反応の低下によりおこりにくく、低血糖を自覚しにくい
低血糖→中枢神経系→Sympathoadrenal outflow
Epinephrine の増加→動機、振戦、arousal
Acetylcholine の増加→発汗、空腹感
 
交感神経副腎反応の低下は、Recent hypoglycemia が原因となっていることが多い。睡眠、Prior exercise でも誘導される。
低血糖が脳内のグルコース取り込みを増やすため交感神経活性を抑制するというGLUT1仮説は否定されている。
 
拮抗ホルモン分泌回復が報告されている薬剤
<グルカゴン分泌刺激>
アミノ酸 経口アラニンが、1型糖尿病の夜間低血糖を予防したという報告あり
 
Beta2 stimulant (Terbutaline)
 
<交感神経刺激>
フルクトース
Glucose-sensing neuron で、グルコキナーゼが活性化されていると交感神経の反応が抑制される。
フルクトースはニューロンのグルコキナーゼ活性を抑制し低血糖時に拮抗ホルモン分泌を増強する。
 
Selective serotonin-uptake inhibitors (SSRI) 
Norepinephrine の輸送をブロックし、sympathetic outflow activity を増加させる。
 
Modafinil
抑制系神経伝達物質、γ-aminobutyric acid (GABA) の産生を低下させる。
 
Opioid-receptor antagonist
 
Adenosine antagonist (caffeine, Theophilin)
フォスフォジエステラーゼを阻害しcAMPを上昇させる。アドレナリンβ受容体作用を増強する。
 
1. Cryer PE. N Engl J Med 2013; 369:362-372 Mechanisms of Hypoglycemia-Associated Autonomic Failure in Diabetes
 
2. Cryer PE. Diabetes. 2011 Jan;60(1):24-7.Elimination of hypoglycemia from the lives of people affected by diabetes.
 
3. Gabriely I, Hawkins M, Vilcu C, Rossetti L, Shamoon H. Diabetes. 2002 Apr;51(4):893-900. Fructose amplifies counterregulatory responses to hypoglycemia in humans.
 
4. Briscoe VJ, Ertl AC, Tate DB, Davis SN. Diabetes. 2008 Dec;57(12):3315-22.  Effects of the Selective Serotonin Reuptake Inhibitor Fluoxetine on Counterregulatory Responses to Hypoglycemia in Individuals With Type 1 Diabetes 
 
5. Vele S, Milman S, Shamoon H, Gabriely I.J Clin Endocrinol Metab. 2011 Nov;96(11):3424-31. Opioid receptor blockade improves hypoglycemia-associated autonomic failure in type 1 diabetes mellitus.
 
6. Ricardson T, Thomas P, Ryder J, Kerr D. Diabetes Care 2005;28:1316–1320 Influence of caffeine on frequency of hypoglycemia detected by continuous interstitial glucose monitoring system in patients with long-standing type 1 diabetes.
 


関連記事

テーマ : 勉強日記
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

最新記事
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
110位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
14位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム