ヒトES細胞、皮膚線維芽細胞から膵内分泌細胞への分化誘導

2013年8月、ヒトES細胞、iPS細胞から4mm 大の脳が形成されたと報告されています。そこでヒトのインスリン分泌細胞への誘導はどの程度すすんでいるか検索してみました。

2012年、ヒトES細胞を、14日間で膵内分泌前駆細胞に分化誘導し、糖尿病を誘導したマウスの腎皮膜下に移植、移植後32週で、膵島移植したマウスと同等の血糖値と、グルコース濃度に応じたインスリン分泌が認められるようになると報告されています。

2013年5月、PNAS に報告されたヒト線維芽細胞から誘導した膵内分泌細胞では、36日間の分化誘導でインスリンを産生し、糖尿病誘導マウスの血糖値を改善させています。遺伝子導入を行わずに分化誘導で、iPS細胞作成法とは異なっています。まだ同様の報告はないので追試を待ちたいところです。
 
まだ実用化には遠いものの、ヒトES細胞から膵内分泌細胞へ誘導した細胞は、マウスでは血糖改善効果、グルコース濃度に応じたインスリン分泌が可能なところまできています。ヒトES細胞は1998年に報告されており、ここ15年間の進歩です。
 
<まとめ>
ヒトES細胞に対して、内胚葉→原腸→後腸→膵内胚葉内分泌前駆細胞という4段階、14日間の分化誘導を行う。
得られた前駆細胞(hES-derived precursor cell)をストレプトゾトシンで糖尿病を誘導したマウスの腎皮膜下に移植する。
12週、25週の糖負荷試験では、hES-derived precursor cell 移植マウスの Cペプチドは、グルコースに反応して上昇しないが、血糖値は12週に比べ25週で改善し、Cペプチド分泌も〜10倍に増える。
 
32週での糖負荷試験で、hES-derived precursor cell 移植マウスは、膵島移植マウスと同等の血糖値となり、 グルコースに反応した Cペプチド分泌が認められる。
インスリン分泌の絶対量は膵島移植マウスに比べ、hES-derived precursor cell 移植マウスでは少ない。
 
移植前のhES-derived precursor cell の40%で、インスリンとグルカゴンが共染色される。移植3ヶ月後、95%の細胞は単一ホルモンのみが染色される。移植hES-derived precursor cell の構造も、ヒト膵島と類似してくる。移植細胞の周辺は、CK19/PDX1 陽性膵管様細胞に囲まれている。3)
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ヒト皮膚線維芽細胞を、demethylation した後、3段階、36日間かけて膵内分泌細胞へ分化させた。
36日後、細胞は膵島用の円形の構造をとる。35 ± 8.9%の細胞がインスリン陽性となる。分化誘導42日後、102日後の細胞ともに、グルコースに反応してインスリンを分泌する。ストレプトゾトシンで糖尿病を誘発したマウスに移植後、血糖値が改善した。
この細胞の分化誘導にはアクチビン、レチノイン酸などを用いており、遺伝子導入が必要なiPS細胞の作成方法とは異なっている。4)
 
1. Lancaster, M. A. et al. Cerebral organoids model human brain development and microcephaly 
 
2. Nature | News, Stem cells mimic human brain
 
3. ヒトの「脳」の作製に成功-直径4ミリ、科学者チーム 
 
3. Rezania A, Bruin JE, Riedel MJ, Mojibian M, Asadi A, Xu J, Gauvin R, Narayan K, Karanu F, O'Neil JJ, Ao Z, Warnock GL, Kieffer TJ. Diabetes. 2012 Aug;61(8):2016-29. Maturation of human embryonic stem cell-derived pancreatic progenitors into functional islets capable of treating pre-existing diabetes in mice.
 
4. Pennarossa G, Maffei S, Campagnol M, Tarantini L, Gandolfi F, Brevini TA.Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 May 28;110(22):8948-53. Brief demethylation step allows the conversion of adult human skin fibroblasts into insulin-secreting cells.
 
5. How to make a functional β-cell. Felicia W. Pagliuca, Douglas A. Melton doi: 10.1242/dev.093187 June 15, 2013 Development 140, 2472-2483.
 
6. Thomson JA, Itskovitz-Eldor J, Shapiro SS, Waknitz MA, Swiergiel JJ, Marshall VS, Jones JM. Science. 1998 Nov 6;282(5391):1145-7.Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts.
 

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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