α細胞に対するGLP-1の直接作用

アログリプチン(ネシーナ)の講演会では、インクレチン関連薬の発売以後、グルカゴン抑制効果について注目されていました。α細胞のGLP-1受容体はβ細胞の0.2%程度で、発現量が少ないものの、GLP−1はインスリン、ソマトスタチンとは独立して、グルカゴン分泌を抑制することが報告されていました。

まとめ
グルカゴンプロモ-ターに蛍光色素Venousをつけたマウスで、膵島のグルカゴンプロモーター陽性細胞をFACS でsortingし、RT-PCRで定量した結果、α細胞のGLP-1受容体はβ細胞の0.2%にすぎない。1) 
 
α細胞でcAMPはわずかな上昇(small increase) はグルカゴン分泌を抑制、高度な上昇(large increase)
は分泌を促進する。
マウスの膵島、グルコース(0mM) の条件で、GLP-1(100nM) はグルカコン分泌を抑制、アドレナリン(5 μM)とGIP(100nM)はグルカコン分泌を促進する。
Forskolinはadenylate cyclase を活性化し、細胞内 cAMPを上昇させる。 
低濃度のForscolin ( ~10 nM)では、グルカゴン分泌は抑制、高濃度ではグルカゴン分泌が促進される。 
 
GLP-1はcAMP上昇が少ないためグルカゴン抑制となり、GIPやアドレナリンはcAMP上昇が大きくグルカゴン分泌を促進すると推察される。
低濃度のForskolinによるグルカゴン分泌抑制は、薬理学的なPKA阻害により認められなくなり、PKA依存性である。
高濃度のForskolin によるグルカゴン分泌促進は、PKA阻害で抑制されず、low-affinity cAMP Epac2がexocytosis を担っている。
 
低濃度のアドレナリンはグルカゴンを抑制、高濃度でグルカゴンを促進する。
生理的な血中濃度ではアドレナリンは、グルカゴンを抑制する。
アドレナリンによるグルカゴン分泌刺激は、通常の1000倍の濃度で起こるので、膵島内のアドレナリン(ノルアドレナリン)支配神経終末で、アドレナリンが分泌されることがグルカゴン分泌を担っている。
 
GLP-1 はα細胞のelectric activity に影響しないが、N型カルシウムチャネルを選択的に阻害し、exocytosis を抑制する。
アドレナリンはα細胞のelectric activityを刺激し、細胞内カルシウム濃度を増加させ、L型カルシウムチャネル活性を増強しexocytosis を促進する。
 
グルコースによるグルカゴン分泌抑制
グルコースと、GLP-1はともにN型カルシウムチャンネルを抑制してグルカゴン分泌を抑制する。
グルコースによるN型カルシウムチャンネルの抑制は、α細胞の membrane potential に影響し、KATP channel を閉じるが、GLP-1によるチャネルの抑制は、membrane potential に影響せず、KATP channel を閉じない。 
 
GLP-1とソマトスタチン
2008年、Holst らは、ラットの還流膵島で、GLP-1がグルカゴン分泌を抑制し、Somatostatin receptor subtype 2 (SSTR2) 拮抗薬 PRL-2903がその作用を完全にブロックしたため、GLP−1はソマトスタチンを介してグルカゴン分泌を抑制するとした。2)

2010年、Rorsman らは、マウス膵島で、SSTR2 拮抗薬 CYN154806 添加時でも GLP−1によるグルカゴン抑制が影響されないとして、GLP-1がソマトスタチンの作用と独立してグルカゴンを抑制するとした。
GLP-1を1時間添加してもソマトスタチン分泌は刺激されないという補足データを示している。
 
α細胞、δ細胞におけるGLP-1受容体が発現しているのか?
Drucker らは、Personal communication として、「Purify したα細胞で、GLP-1受容体mRNAが検出できない。GLP-1受容体mRNA、グルカゴン受容体mRNAは、マウスとラットのα細胞を用いたin situ hybridization で検出できない。」としている。
 
感想
アドレナリンは低濃度でグルカゴン抑制、高濃度でグルカゴン分泌促進に働いて、生理学的な血中濃度ではグルカゴン抑制に働くとしている点が興味深かった。Discussion では、糖尿病では心臓などでβアドレナリン受容体の発現が低下していると、アドレナリンによるグルカゴン抑制作用が低下するとしていた。
しかし依然として、GLP-1受容体がα細胞、δ細胞に発現するかどうかははっきりしていない。
 



 


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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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