膵島のカプセル化2

Nature Medicine の記事より

Nature Medicine の記事よりここ20年にわたり、膵島をカプセルに入れた移植が試みられてきた。免疫抑制剤が不要の利点があるが、カプセルが線維組織に包まれ、瘢痕化が起こり、よい結果が得られていなかった。
ここ20年にわたり、膵島をカプセルに入れた移植実験が試みられてきた。免疫抑制剤が不要の利点があるが、カプセルが線維組織に包まれ、瘢痕化が起こり、よい結果が得られていなかった。

JDRFおよび非営利財団 Helmsley Charitable Trust はこの状況を改善するべく、MITのグループに、2007年から7年間の資金援助をおこなった。その結果、生体反応の少ない (biocompatible) カプセル材質の開発が進行した。
 
カプセル化の方法は 膵島をmacrodevice に入れるか、それぞれを保護作用のある hydrogel につつむかのいずれかである。
 
<Macrodevice>
ViaCyte 社が開発したEncaptraは、手のひら大のカプセルで、膵島を1000個/cm2 で保持する。
面積は24cm2で24000個の膵島が入る。しかしインスリン注射が必要なくなるには、40万個の膵島が必要。
 
Beta-O2 社が開発したデバイスは、膵島密度について解決策になるかもしれない。
アルギン酸とテフロンでできた、ホッケーパック大のデバイスの中に、膵島を二層で維持する。それぞれの層が、アルギン酸のmicrosphereでカプセル化されている。
 
Beta-O2 社のデバイスに膵島 (cadaveric islet) を入れ、63歳の1型糖尿病患者の腹部に移植した。
移植10か月後、デバイスから、ある程度インスリンを分泌していた。インスリン注射を止めるには充分な量ではない。免疫抑制剤は使われていなかったが、デバイス内の細胞に免疫的攻撃を認めなかった。8人のトライアルが、2014年に予定されている。
 
同じくBeta-O2 社が開発したデバイス、dubbed βAir は、注射針で酸素の供給が必要だが、酸素の供給量を増やすことにより、直径68mm、厚さ18mmのデバイスに、20万個の膵島を維持することができる。
 
<アルギン酸>
免疫系を刺激しない、生体に順応する (biocompatible) なマテリアルが必要とされている。藻に含まれるアルギン酸の派生物質derivative774種類から選ばれた E9 は、 マウス移植実験で、従来のアルギン酸より免疫系を刺激しない
MITのグループは、ラット膵島をE9のカプセルに入れ、糖尿病マウスに移植した。10ヶ月後、糖尿病を誘導するSTZの遅延作用による顔面腫瘍によりテストを中止となったが、カプセル内の膵島は、生きてインスリンを分泌していた。サルでの実験が、今年スタート予定となっている。
 
カプセル化した膵島を糖尿病治療に使うには、まだ長い道のりがある。現在はヒトや生きた動物への移植で、カプセルの材質が生体の反応を起こさないことを確かめている段階。
その後にカプセル内の膵島が機能し、糖尿病が治療できること、移植した膵島が拒絶されず一定期間機能することを確かめる必要がある。まだ最初のステップで苦労しているが、それはamazing なことでもある。
 
感想
脳死ドナーからの膵島移植では、膵島を門脈に点滴で入れ、肝臓に生着させる。レシピエントは免疫抑制剤の服用が必要である。
 
ES細胞からインスリン産生細胞では、腫瘍化のリスクがある。
膵島をカプセル化して腹部などに移植すれば、腫瘍化した場合も広がりを防ぐことができ、取り出しやすい。カプセル化した膵島移植では免疫抑制剤は不要である。
インスリン産生細胞作成技術の進歩に平行して、膵島カプセルの材質の進歩も進んでいくものと思われます。
 
1. Dolgin E. Nat Med. 2014 Jan 7;20(1):9-11. doi: 10.1038/nm0114-9.Encapsulate this.

2. Ludwig B, Reichel A, Steffen A, Zimerman B, Schally AV, Block NL, Colton CK, Ludwig S, Kersting S, Bonifacio E, Solimena M, Gendler Z, Rotem A, Barkai U, Bornstein SR.Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Nov 19;110(47):19054-8. Transplantation of human islets without immunosuppression.

 
3. JDRF to Provide Additional Support for Upcoming Clinical Trial of ViaCyte’s Encapsulated Cell Therapy for Type 1 Diabetes

 


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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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