院外での人工膵臓 (Bionic Pancreas)の治験結果、平均血糖値が低下し低血糖が減少する。

ボストンのグループが、院外で人工膵臓を使用した52例の結果をNEJM誌に報告しています。
2日目から5日目のデータで、人工膵臓とインスリンポンプの比較では平均血糖値が低下し低血糖が減少するという良い結果です。
 
まとめ
院外で5日間の人工膵臓(bionic pancreas) と自分の(従来の)インスリンポンプの比較試験
大人(21歳以上)20人、青少年(12歳~21歳)32人
2日目から5日目までのデータで、平均血糖133±13 vs. 159±30 mg
血糖値70mg/dl未満の期間 4.1% vs.7.3% であり、人工膵臓で良好な結果であった。
 
この人工膵臓はインスリンとグルカゴンを注入する。
食事に対するボーラスインスリンを決める際に、
食事量 ”通常通り”、”多め”、”少なめ”、”ごく少量” および”朝食”、”昼食”、”夕食”の入力ができる。
ボーラスインスリンの初期設定は、0.05単位/kg となっている。
 
期間中、大人は病院のそばのホテルにスタッフとともに滞在、いつでもレストランに行くことができる。
飲酒は男性3杯、女性2杯に制限、
静脈血血糖を30分に1回、血糖値70mg/dl未満では15分に1回測定する。
指先の血糖は2時間ごと、食事の前、運動中30分ごと、低血糖症状があったときに測定
青少年は糖尿病キャンプでおこなった。
 
スタディの問題点 (limitation)
) は
アセトアミノフェンを服用していると血糖を高めに評価してしまうので低血糖のリスクが増える。
少量のグルカゴンの末梢持続投与には安全性が確立されていない。
グルカゴン溶液は、安定性の問題から、毎日溶解して作り入れ替える必要がある。
インスリンとグルカゴンの別々のポンプが必要であり、ワイアレス接続の信頼性をあげる必要がある。
 
Outpatient Glycemic Control with a Bionic Pancreas in Type 1 Diabetes
Steven J. Russell, M.D., Ph.D., Firas H. El-Khatib, Ph.D., Manasi Sinha, M.D., M.P.H., Kendra L. Magyar, M.S.N., N.P., Katherine McKeon, M.Eng., Laura G. Goergen, B.S.N., R.N., Courtney Balliro, B.S.N, R.N., Mallory A. Hillard, B.S., David M. Nathan, M.D., and Edward R. Damiano, Ph.D. June 15, 2014DOI: 10.1056/NEJMoa1314474
'Bionic Pancreas' Astonishes Diabetes Researchers (NBCの記事、英文)

Bionic pancreas frees people from shackles of diabetes (Newscientist、英文)
人工膵臓は糖尿病の足かせから解放してくれるのではという英文の記事です。開発者は自分の子供が2000年に生後11ヶ月で1型糖尿病と診断され、人工膵臓をつくることを決意した。子供が大学に入学する2017年秋までに人工膵臓の認可を得たいと考えている。

Bionic pancreas helps control diabetes, study says (USA Today)
2016年に大規模なスタディが計画されている。それまでにインスリンとグルカゴンを1つのポンプに搭載できるように開発をすすめている。




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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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