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DPP4阻害薬と創傷治癒 (wound healing)

DPP4阻害薬はケラチノサイトのepithelial-mesenchymal transition を誘導し創傷治癒を促進する。

NRF2と創傷治癒
NRF2 (nuclear factor-E2-related factor 2)は、抗酸化作用を促進し、reactive oxygen species の産生を抑制する。keap1はactin-binding cytoplasmic proteinで、通常状態では、NRF2と結合してNRF2を細胞質にとどめている。高血糖下では、NRF2の核内移行が抑制されている。
糖尿病潰瘍の病変周辺部では、酸化ストレスが増加している。
keap1の抑制による酸化ストレス改善は線維芽細胞の再生能 regenerative capacity を増加させる。1)
薬理学的にNRF2を活性化する sulforaphane、cinnamaldehyde が糖尿病マウスで創傷治癒 wound closure を促進した。2)

DPP4阻害薬はNRF2とは別の経路で創傷治癒を促進する。
DPP4阻害薬はNRF2を活性化するためNRF2を介して糖尿病マウスの創傷治癒と促すと考えられていた。予想に反し、NRF2を発現しないマウスでDPP4阻害薬が創傷治癒を促進することから、NRF2以外の経路も重要であることが明らかになった。
DPP4阻害薬を添加したケラチノサイトで、E-cadherin (上皮細胞マーカー)が減少、vimentin、snail が増加する。DPP4阻害薬はケラチノサイトのepithelial-mesenchymal transition (EMT) を直接促進する。
さらにDPP4阻害薬は、線維芽細胞のSDF-1α産生を促進する。SDF-1αはケラチノサイトのEMTを誘導する。
糖尿病マウスの皮膚病変においても、DPP4阻害薬によりSDF-1αが増加し、EMTがみとめられる。3)

DPP4阻害薬と腫瘍転移のリスク
ROSの減少は、遊走能を促進し、腫瘍の転移能を増加させる。
Wang らは、α-linoleic acid (ALA)による抗酸化作用、あるいはシタグリプチンやサクサグリプチンによるNRF2 の活性化が、xenograft mouse model で腫瘍転移のリスク増加を示した。4, 5)

1. Soares MA et al. Restoration of Nrf2 Signaling Normalizes the Regenerative Niche. Diabetes. 2016 Mar;65(3):633-46.

2. Long M et al. An Essential Role of NRF2 in Diabetic Wound Healing. Diabetes. 2016 Mar;65(3):780-93.

3. Long M et al. DPP-4 Inhibitors Improve Diabetic Wound Healing via Direct and Indirect Promotion of Epithelial-Mesenchymal Transition and Reduction of Scarring Diabetes. 2017 Dec 18. pii: db170934.

4. Tschöp MH et al. Opposing Effects of Antidiabetic Interventions on Malignant Growth and Metastasis. Cell Metab. 2016 Jun 14;23(6):959-960

5. Wang H et al. NRF2 activation by antioxidant antidiabetic agents accelerates tumor metastasis. Sci Transl Med. 2016 Apr 13;8(334):334ra51.


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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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