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パルス状のインスリン分泌

インスリンは、約5分間隔でパルス状に分泌されている。
β細胞の膜電位は、1分未満間隔のfast oscillation 、4-6分間隔のSlow oscillation および compound oscillationがある。Slow oscillation とcompound oscillation は、血中インスリンの oscillation と一致する。1)

β細胞の膜電位、細胞内カルシウム濃度、解糖系酵素活性、cAMP、ミトコンドリア膜電位、β細胞や膵島の酸素消費量、NAD(P)H、ATP/ADP、KATP-current は、 slow oscillation を示す。1, 2, 3)

インスリンのバルス状分泌を制御するのは、Ca2+依存性ATP産生やCa2+ pump によるATP消費の結果が metabolic oscillation である、あるいは解糖系の oscillation がATP産生のoscillation を生じさせ、KATP channel を調節することにより、electrical bursting と Ca2+ oscillation を制御するという説である。
現在は、解糖系に対するCa2+のフィードバックを取り入れたIntegrated oscillation model が妥当であるとされている。1)
そのほか cAMP oscillation、膵島のパラクラインファクター、インスリンそのものも β-cell oscillation に関与する。1)

<Ca2+ と代謝シグナルの相互作用>
Ca2+ oscillation とmetabolic oscillation は相互に影響している。1)
Ca2+濃度上昇時、Ca2+ ATPase pumpの加水分解によりATP濃度は緩やかに減少し、KATP channel は再活性化される。Ca2+濃度低下時、ATPは緩やかに上昇、KATP channel が抑制され、あらたなactive phase が開始される。

Phosphofructokinase (PFK) は、fructose-6-phosphate をfructose-1,6- bisphosphate (FBP)に変換する。PFKはATP によりアロステリックな阻害を受ける。グルコース10mMの存在下の膵島で、FBP濃度はノコギリの歯状に変動する。ダイアゾキサイドにより変動は消失するが、KCl による膜の脱分極でカルシウムを安定させた結果、ノコギリの歯状の変動が回復する。このことは Metabolic oscillationが Ca2+ oscillationを必要とすることを意味している。

ピルビン酸デヒドロゲナーゼはピルビン酸をacetyl-CoAに変換する酵素で Ca2+により強力に活性化される。acetyl-CoAがミトコンドリアで代謝され ATPが上昇、PFKが抑制され解糖系の速度が低下する。

α-ketoisocaproic acid (KIC)はロイシンの代謝産物で解糖系を経由せずクエン酸回路に入る。グルコースのない条件下で、KICはCa2+ oscillation を惹起する。

パルス状のインスリン分泌の利点 3)
下流のシグナリングの複雑さに対応する。
細胞間のネットワークをコーディネートする。
間欠性のサイクルが細胞のストレスを軽減する。

イヌ、ラットでパルス状のインスリン分泌がインスリン受容体シグナルを増強 potentate し、肝糖産生抑制に有効である。3)

1. Bertram R, Satin LS, Sherman AS. Closing in on the Mechanisms of Pulsatile Insulin Secretion. Diabetes. 2018 Mar;67(3):351-359.

2. Nunemaker CS, Satin LS. Episodic hormone secretion: a comparison of the basis of pulsatile secretion of insulin and GnRH. Endocrine. 2014 Sep;47(1):49-63.

3. Tian G, Sandler S, Gylfe E, Tengholm A. Glucose- and hormone-induced cAMP oscillations in α- and β-cells within intact pancreaticislets. Diabetes. 2011 May;60(5):1535-43.

4. Bertram R, Sherman A, Satin LS. Metabolic and electrical oscillations: partners in controlling pulsatile insulin secretion. Am J Physiol Endocrinol Metab 2007;293: E890–E900

5. Matveyenko AV et al. Pulsatile portal vein insulin delivery enhances hepatic insulin action and signaling. Diabetes. 2012 Sep;61(9):2269-79.

cAMP oscillationのまとめ(1)

インスリンはパルス状に門脈に分泌され、肝臓のインスリンシグナルに関係する遺伝子発現を制御している。


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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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