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SGLT2阻害薬による心保護作用

Lancet Diabetes & Endocrinology誌で、SGLT2阻害薬による心保護作用について、1)NHE抑制による心筋細胞へのナトリウム蓄積抑制とその結果としてのカルシウム蓄積抑制、2)ROS産生抑制、3)SGLT1抑制、4)グルカゴン分泌促進、ケトン体利用、5)血圧改善、体重減少、利尿作用が挙げられている。

1)NHE抑制
エンパグリフロジンは臨床で使われる濃度でsodium–hydrogen exchanger (NHE)を抑制し心筋細胞でナトリウムの蓄積を防ぐ。その結果、細胞質でカルシウム蓄積が抑制され、ミトコンドリアのカルシウムが増加し心不全の予防には利点となる。
NHE抑制は、ischemia-reperfusion injury で心保護作用を示すことが知られている。ほかのSGLT2阻害薬もNHEを抑制するかまだ明らかではない。EMPA-REG OUTCOMEの患者は、虚血による傷害の前にエンパグリフロジンによるNHE 抑制を受けている。

2)ROS産生抑制
心臓では、sodium-glucose co-transporter-1 (SGLT1)/sodium-myoinositol co-transporter-1 (SMIT1) は、gp91phox NADPH oxidase activity とリンクしている。Reactive oxygen species (ROS) は正常な生理学的シグナリングと細胞ストレスへの適応の役割を担っている。過剰なROS産生は心不全のような病的状態や心不全、ischemia-reperfusion injury での虚血による細胞死を悪化させる。
エンパグリフロジンは、SGLT2に選択性が強いが、ほかの薬剤、たとえばカナグリフロジンは、SGLT1とSGLT2の両方を阻害する。SGLT1の阻害は、実験モデルの高グルコース環境で過度なROS産生を抑制する。
SGLT2阻害薬は、SGLT1とSGLT2の両方を直接的に阻害するか、あるいは血糖コントロールの改善によりSGLT1の発現を低下させた結果、過度なROS産生を抑制し、虚血組織の酸化ストレスが改善することにより傷害を軽減するかもしれない。

3)SGLT1阻害
細胞外のグルコース増加はグルコースとナトリウムの細胞内取り込みを促進する。
心筋梗塞や脳卒中で生じるischemia-reperfusion injuryで、細胞外グルコース濃度が高い場合、虚血後の傷害されやすい細胞に、SGLT1により細胞傷害性の高いナトリウム蓄積がおこり、カルシウム蓄積も生じて、mitochondrial permeability transition pore が開口し細胞死となる。
虚血後や心不全でSGLT1 が増加するため、SGLT1が細胞傷害に重要な役割を果たしているかもしれない。SGLT1およびSGLT2を阻害する薬剤は、急性傷害を受けた細胞のSGLT1を介する glucoses toxicicity を軽減するのに十分であると思われる。

4)グルカゴンとmetabolic substrate switching
SGLT2阻害薬は尿糖排泄を持続させ体重を減らし、軽度なケトン体産生をおこす。
SGLT2阻害薬により膵α細胞でグルカゴン分泌が促進される。
グルカゴンは筋収縮性効果 ionotropic effect があり、ケトン体の利用はグルコースに比べ酸素消費量を減らしつつATPを合成する。

5)直接的な細胞保護に加え、血圧改善、体重減少、多尿は心不全患者に利点がある。
心不全があり駆出率が低下した患者と保たれた患者でエンパグロフロジンのトライアルがおこなわれている。

Bell RM, Yellon DM. SGLT2 inhibitors: hypotheses on the mechanism of cardiovascular protection. Lancet Diabetes Endocrinol. 2018 Jun;6(6):435-437. doi: 10.1016/S2213-8587(17)30314-5.

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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