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1型糖尿病と運動マネージメント

1型糖尿病で無酸素運動、高強度インターバルトレーニングは、有酸素運動に比べ血糖値が低下しにくい。血糖値90~124mg/dlで、有酸素運動を開始する場合はグルコース10gの摂取が必要であるが、無酸素運動、高強度インターバルトレーニングでは開始可能となっている。

有酸素運動
有酸素運動中、インスリン分泌は低下し、グルカゴン分泌が増加、門脈に肝臓からグルコースが放出され運動中の筋肉のグルコース取り込みに対応する。
運動中、インスリン作用によらない筋肉によるグルコースの取り込みが50倍程度まで増加する。

運動強度がVO2max50-60%を超える場合、脂肪酸化は減少し、おもにグルコースによりエネルギーが供給される。有酸素運動運動中のグルコースはおもにグルカゴンの増加により供給される。グルコース放出や他のカウンターレギュラトリーホルモンの神経系のコントロールも補助的な役割を担っている。
長時間の有酸素運動(ウオーキング、ジョギング、サイクリング)で、もし血中インスリン濃度は下がらなければ、カウンターレギュラトリーホルモンによる肝臓からの糖放出はインスリン濃度が低下している時に比べて効果が不十分である。

大部分の1型糖尿病では、有酸素運動で血糖値が低下する。動作の開始時、インスリン血中濃度はすぐには低下せず、運動中、皮下脂肪の血流が増えるため循環血中のインスリン濃度は上昇するかもしれない。循環中のインスリン値が高い場合、肝糖放出に対するブドウ糖処理 (glucose disposal) が上昇、脂肪融解は遅延する可能性がある。

無酸素運動、高強度インターバルトレーニング
短期で強度の無酸素運動 (短距離走 (sprinting)、ウエイトリフティング、いくつかの競技スポーツ (some competitive sports)、高強度インターバルトレーニング (high intensity interval training) )では、血糖値が上昇する。
短距離走のような無酸素運動や高強度インターバルトレーニングでは、有酸素運動ほど血中インスリンは低下しない。動作の時間が短いことが理由の一部である。
高強度インターバルトレーニングの初期回復期 (early recovery) では、カウンターレギュラトリーホルモンや他の代謝産物により血糖値が上昇し、血中インスリン濃度はベースラインより上昇する。
レジスタンス運動では、カウンターレギュラトリーホルモンや ブドウ糖処理を抑制する代謝産物が増加する。

1型糖尿病では、レジスタンス運動の方が、中等度強度の有酸素運動より血糖値が安定している。レジスタンス運動で血糖値が上昇する人もいる。高強度インターバルトレーニングでは、有酸素運動にくらべ血糖値の低下が少ない。
有酸素運動運動の前にレジスタンス運動を取り入れた場合、カウンターレギユラトリーホルモン上昇、乳酸の増加により血糖値の低下を予防できる。

運動前の血糖値と血糖管理
開始前血糖値90mg/dl 未満
運動開始前に、グルコース10-20 gを摂取する。

90-124 mg/dl
有酸素運動前にはグルコース10gを摂取する。
無酸素運動、高強度インターバルトレーニングは開始可能。

126-180 mg/dl、
有酸素運動 開始可能である。
無酸素運動と高強度インターバルトレーニングは開始可能であるが血糖値が上昇する可能性がある。

182-270 mg/dl
有酸素運動 開始可能である。
無酸素運動では血糖値が上昇するかもしれない。

270 mg/dl
高血糖が説明できない場合、血中ケトンをチェックする。ケトンが軽度上昇 (<1.4 mmol/L)の場合、30分未満の軽い運動にとどめる。少量の補正インスリンが必要かもしれない。血中ケトンが1.5mmol/Lを超える場合、運動は禁忌、血糖コントロールを最優先する。
血中ケトン上昇 (> 1.5 mole/L)、尿中ケトン上昇 (>2+ あるいは > 4 mole/L)ではインスリン投与をおこなう。正常血糖値に近くでケトン症 (ketotic)である場合は炭水化物も摂取する。

運動が禁忌
・ケトン上昇
・24時間以内の重症低血糖(〜50 mg/dl)
・運動によると低血糖に対応する準備 (血糖モニターの準備、スナック、糖尿病IDカード)ができていない場合

有酸素運動時の炭水化物必要量
運動時間
30分未満 開始前血糖値90 mg/dl 未満では炭水化物10-20 gを摂取する。
30-60分の運動 低強度、中等度強度の有酸素運動では、運動中に血糖値と運動強度に応じて少量の炭水化物(10-15 g /h)を摂取する。
60-150分の運動  炭水化物30-60 g/hを摂取する。

インスリン量の調整
食後2-3時間後の運動で、あらかじめbolus insulin を減量する。
持効型インスリンを運動の少なくとも48時間前に減量を推奨する論文もあるが、血糖コントロールを危うくするため推奨しない。
運動後、インスリン感受性は上昇している。グルコースのカウンターレギュレーションも低下している可能性がある。有酸素運動、無酸素運動とも回復期に、遅発性低血糖 delayed-onset hypoglycemia がおこりうる。運動後24時間は低血糖のリスクが増加する。午後の運動は夜間低血糖リスクが高い。

Riddell MC et al. Exercise management in type 1 diabetes: a consensus statement Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 May;5(5):377-390.

Harmer AR et al. High-intensity training improves plasma glucose and acid-base regulation during intermittent maximal exercise in type 1 diabetes. Diabetes Care. 2007 May;30(5):1269-71.

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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