バセドウ眼症とチアゾリジン誘導体

2010年2月25日号のNEJMにバセドウ眼症のReview が出ていたが 1)、2009年の3月にも眼症のReviewを読んだのを思い出しました 2)今回の方がmolecular mechanism に深く言及していた。

臨床で頻度の高い疾患を違った角度から解説していて、こういうところが、NEJMが世界的に評価か高い理由なのではと思っています。甲状腺疾患はendocrinologist が専門とするが、バセドウ病理解には、免疫学の深い知識も必要と感じた。また思いがけず、PPAR-γの作用を認識されられた。


今回のReviewで知ったのは、
1. 40歳以下の患者では、眼窩の脂肪細胞の増加 (fat expansion) 、60歳以上では、外眼筋の腫脹
(swelling) が起こりやすい。

2. 眼窩のfibroblast はサイトカインに反応して、ヒアルロン酸を産生、一部のfibroblast は脂肪細胞に分化する。fibroblastはTHF-βによりmyofibroblast となり線維化が起こる。


3. PPAR-γは、脂肪細胞の分化と増殖に重要。PPAR-γ agonist が、眼窩の培養preadipocyte のTSH受容体(thyrotropin receptor) の発現を増加させ、adipogenesis を促進したという報告、2型糖尿病患者で、バセドウ眼症のあるなしにかかわらず、眼球突出を進行させたという論文あり4)。


PPAR-γ作動薬は、小型の脂肪細胞を増やし、インスリン感受性を改善するというふうに認識していた。他の総説を確認すると、皮下脂肪は増やすことになっており5)、バセドウ眼症のある2型糖尿病に対しては慎重投与となると思います。


1) Mechanisms of Disease: Graves' Ophthalmopathy
 N Engl J Med 2010;362:726-38.

2) Graves' Ophthalmopathy N Engl J Med 2009;360:994-1001.

3) Peroxisome proliferator-activated receptor-gamma in thyroid eye disease: contraindication for thiazolidinedione use? J Clin Endocrinol Metab. 2003 Jan;88(1):55-9.

4) Treatment with a thiazolidinedione increases eye protrusion in a subgroup of patients with type 2 diabetes. Clin Endocrinol (Oxf). 2006 Jul;65(1):35-9.

5) Thiazolidinediones N Engl J Med 2004;351:1106-18.

医師ブログ20100304  PhotoXpress

Robert James Graves は、アイルランド、Karl Adolph von Basedow はドイツ出身。
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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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