1型糖尿病 最近の知見(講演会)

小林哲郎教授(山梨大学)の御講演を聞いてきました。劇症1型糖尿病、急性発症1型糖尿病、自己免疫性膵炎、SPIDDMを系統立てて説明していただき、あっという間の1時間でした。

講演のまとめ

1) 発症して間もない急性発症1型糖尿病の剖検で、膵島でのエンテロウイルスタンパク(VP-1)の発現が証明され、コクサクキウイルスB4が確認された。

2) 劇症1型糖尿病でも、VP10 が発現していることを確認。さらにケモカインの発現を介した、β細胞、α細胞障害のメカニズムが明らかにされている。

3) 自己免疫性膵炎で見つかったアミラーゼα-2A抗体は、88%の劇症1型糖尿病、21%の急性発症1型糖尿病にも認められた。

4) 自己免疫性膵炎はステロイド治療でインスリン分泌が改善する。(2-4は小林先生の研究グル―プの仕事)

5) GAD抗体(WHO)180  IU/mlはGAD抗体(コスミック社測定)10 IU/ml にあたる。小林先生らのデーターでは、低抗体価でインスリン分泌が保たれている症例でも、長期的にはインスリン分泌が低下していくということでインスリン治療を推奨されていた。

6) SPIDDM は子供にもあるので、latent autoimmune diabetes in adults (LADA)と疾患概念は完全に重なるものではない。

感想

インスリン分泌の保たれたGAD抗体陽性糖尿病をどう治療するかが私の最近の関心事でした。インスリン治療を勧めていたが、海外の文献ではインスリン治療を行わないものも見られていたためです。今回の御講演でインスリン治療の必要性を再認識。

劇症1型糖尿病と急性発症1型糖尿病は切り離された疾患ではないことが明らかになりつつあるようです。最先端の疾患メカニズムから臨床上の疑問まで分かり、非常に勉強になりました。虎ノ門病院時代に小林先生は、週一回レジデント向けに講義をされていたそうで、私たちも今回の講演でinspire されて臨床に戻っていくのでした。

1. Coxsackie B4 virus infection of β cells and natural killer cell insulitis in recent-onset type 1 diabetic patients PNAS 2007 104:5115-5120

2. Enterovirus Infection, CXC Chemokine Ligand 10 (CXCL10), and CXCR3 Circuit A Mechanism of Accelerated β-Cell Failure in Fulminant Type 1 Diabetes Diabetes 58:2285–2291, 2009

3. Amylase α-2A Autoantibodies Novel Marker of Autoimmune Pancreatitis and Fulminant Type 1 Diabetes Diabetes 58:732–737, 2009

4. Evidence of Primary b-Cell Destruction by T-Cells and b-Cell Differentiation From Pancreatic Ductal Cells in Diabetes Associated With Active Autoimmune Chronic Pancreatitis Diabetes Care 24:1661–1667, 2001

5. Corticosteroid-responsive diabetes mellitus associated with autoimmune pancreatitis Lancet 2000; 356: 910 - 911


 

 

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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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