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リキセナチドは膵切除後の糖尿病患者の食後血糖を抑制する。

リキセナチドは膵切除後の二次性糖尿病患者の食後血糖値を抑制する。胃排出の減速と食後のgut-derived glucagon の減少が関与している。

膵全摘後患者12人、コントロール12人、クロスオーバースタディ、膵全摘患者では、前日まで通常通りインスリンをうち、当日はインスリンを打たない。30分前リキセナチド20μg あるいはプラセボの1回注射の後、200 mlの液状の食事を摂取する。

リキセナチド投与後、膵全摘後患者では、プラセボに比べ、ピークの血糖値が低く、Gastric emptying 、グルカゴン反応が減少している。Cペプチドはほぼ測定感度以下、2例で低い反応を認めた。

腸管のL細胞では、prohormone convertase (PC) 1/3によりプログルカゴン からGLP-1が生成される。膵島のα細胞ではPC2によりプログルカゴンからグルカゴンが産生される。PC2の発現はα細胞に限定的とされてきた。

膵全摘後の糖尿病患者から分泌されるグルカゴンは腸管のL細胞由来であると考えられる。L細胞にもPC2が発現するか、PC1/3がプログルカゴンを特有の部位と異なる部位で分割し (unspecific procession) グルカゴンを産生しているという二つの可能性があり、後者の方がより説明しやすいかもしれない。膵蔵を摘出するWhipple’s procedure では、胃と空腸が吻合されている。小腸のL細胞では食後に強力な刺激を受け、PC1/3によりグルカゴンが産生されると考えられる。

膵全摘患者で、リキセナチドによる膵外のグルカゴン分泌に対する直接作用は除外されていない。

Juel CTB et al. The GLP-1 receptor agonist lixisenatide reduces postprandial glucose in patients with diabetes secondary to total pancreatectomy: a randomised, placebo-controlled, double-blinded crossover trialDiabetologia. 2020 May 11. doi: 10.1007/s00125-020-05158-9. Online ahead of print.

Jorsal T et al. Enteroendocrine K and L Cells in Healthy and Type 2 Diabetic Individuals. Diabetologia. 2018 Feb;61(2):284-294.
PC2をコードするPCSK2 mRNAとPC2陽性細胞の発現が腸管全体に認められる。
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N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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