グルカゴンは乳酸よりもグルタミンからの糖新生を増強する。

 グルカゴンは乳酸よりもグルタミンからの糖新生を増強する。

グルタミンは、グルタミン酸をへて、α-ケト酸に代謝され糖新生の材料となる。
グルカゴンは肝臓で乳酸経由よりもグルタミン分解経由の糖新生を増強する。

グルカゴンは、protein kinase Aの活性化およびそれに伴うendoplasmic reticulum からのカルシウム放出により
ミトコンドリアのα- ketoglutarate dehydrogenaseを活性化する。

グルタミン代謝の第1弾段階の酵素であるGlutaminase 2 (GLS2)のノックアウトマウスでは、空腹時のグルカゴンとグルタミンのレベルが高く、インスリン抵抗性の条件でも、空腹時血糖値が低い。

GWASの結果、GLS2のLeu581がproline に置換された polymorphismでは、空腹時血糖が高く血中グルタミン値が低い。このpolymorphismは、gain-of-function mutation である。

Miller RA et al. Targeting hepatic glutaminase activity to ameliorate hyperglycemia. Nat Med. 2018 Mar 26.

心臓のGLP-1受容体の発現

RT-PCRで、GLP-1受容体(GLP-1R) mRNAが、心房と心室に発現している。in situ hybridization で、GLP-1Rは心房の sinoatrial nodeに発現しているが、心室に発現は確認できない。

まとめ
GLP-1RmRNAのopen reading frame 全長の転写transcript は、全ての心房、心室に膵臓と同等の検知レベルで認められた。心筋線維芽細胞、冠動脈血管内皮細胞、冠動脈血管平滑筋に、GLP-1RmRNA は認められなかった。

グルカゴンとGLP-2は、同じpreproglucagon 遺伝子から転写される。心房および心室で、GLP-2受容体mRNA発現はかなり低く、グルカゴン受容体mRNAは左室には認められなかった。

In situation hybridization で、十二指腸Brunner’s gland、膵島、心房組織のsinoatrial node にGLP-1Rの発現が確認できるが、心室組織では確認できない。
信頼できる抗体によるウエスタンブロッティングでは、感度が不十分で心室だけでなく膵島のGLP-1Rの発現が検出できない。

Baggio LL et al. GLP-1 Receptor Expression Within the Human Heart. Endocrinology. 2018 Apr 1;159(4):1570-1584.

パルス状のインスリン分泌

インスリンは、約5分間隔でパルス状に分泌されている。
β細胞の膜電位は、1分未満間隔のfast oscillation 、4-6分間隔のSlow oscillation および compound oscillationがある。Slow oscillation とcompound oscillation は、血中インスリンの oscillation と一致する。1)

β細胞の膜電位、細胞内カルシウム濃度、解糖系酵素活性、cAMP、ミトコンドリア膜電位、β細胞や膵島の酸素消費量、NAD(P)H、ATP/ADP、KATP-current は、 slow oscillation を示す。1, 2, 3)

インスリンのバルス状分泌を制御するのは、Ca2+依存性ATP産生やCa2+ pump によるATP消費の結果が metabolic oscillation である、あるいは解糖系の oscillation がATP産生のoscillation を生じさせ、KATP channel を調節することにより、electrical bursting と Ca2+ oscillation を制御するという説である。
現在は、解糖系に対するCa2+のフィードバックを取り入れたIntegrated oscillation model が妥当であるとされている。1)
そのほか cAMP oscillation、膵島のパラクラインファクター、インスリンそのものも β-cell oscillation に関与する。1)

<Ca2+ と代謝シグナルの相互作用>
Ca2+ oscillation とmetabolic oscillation は相互に影響している。1)
Ca2+濃度上昇時、Ca2+ ATPase pumpの加水分解によりATP濃度は緩やかに減少し、KATP channel は再活性化される。Ca2+濃度低下時、ATPは緩やかに上昇、KATP channel が抑制され、あらたなactive phase が開始される。

Phosphofructokinase (PFK) は、fructose-6-phosphate をfructose-1,6- bisphosphate (FBP)に変換する。PFKはATP によりアロステリックな阻害を受ける。グルコース10mMの存在下の膵島で、FBP濃度はノコギリの歯状に変動する。ダイアゾキサイドにより変動は消失するが、KCl による膜の脱分極でカルシウムを安定させた結果、ノコギリの歯状の変動が回復する。このことは Metabolic oscillationが Ca2+ oscillationを必要とすることを意味している。

ピルビン酸デヒドロゲナーゼはピルビン酸をacetyl-CoAに変換する酵素で Ca2+により強力に活性化される。acetyl-CoAがミトコンドリアで代謝され ATPが上昇、PFKが抑制され解糖系の速度が低下する。

α-ketoisocaproic acid (KIC)はロイシンの代謝産物で解糖系を経由せずクエン酸回路に入る。グルコースのない条件下で、KICはCa2+ oscillation を惹起する。

パルス状のインスリン分泌の利点 3)
下流のシグナリングの複雑さに対応する。
細胞間のネットワークをコーディネートする。
間欠性のサイクルが細胞のストレスを軽減する。

イヌ、ラットでパルス状のインスリン分泌がインスリン受容体シグナルを増強 potentate し、肝糖産生抑制に有効である。3)

1. Bertram R, Satin LS, Sherman AS. Closing in on the Mechanisms of Pulsatile Insulin Secretion. Diabetes. 2018 Mar;67(3):351-359.

2. Nunemaker CS, Satin LS. Episodic hormone secretion: a comparison of the basis of pulsatile secretion of insulin and GnRH. Endocrine. 2014 Sep;47(1):49-63.

3. Tian G, Sandler S, Gylfe E, Tengholm A. Glucose- and hormone-induced cAMP oscillations in α- and β-cells within intact pancreaticislets. Diabetes. 2011 May;60(5):1535-43.

4. Bertram R, Sherman A, Satin LS. Metabolic and electrical oscillations: partners in controlling pulsatile insulin secretion. Am J Physiol Endocrinol Metab 2007;293: E890–E900

5. Matveyenko AV et al. Pulsatile portal vein insulin delivery enhances hepatic insulin action and signaling. Diabetes. 2012 Sep;61(9):2269-79.

cAMP oscillationのまとめ(1)

インスリンはパルス状に門脈に分泌され、肝臓のインスリンシグナルに関係する遺伝子発現を制御している。


1型糖尿病のグルカゴン分泌不全

1型糖尿病で、低血糖時のグルカゴン反応が不十分で、食事に反応したグルカゴン反応が不適当 Inappropriate である。その原因として以下が挙げられている。

神経系でグルコース濃度検知不全 (Defects in neural glucose sensing)
膵島の交感神経の減少 (Impaired islet innervation)
膵島内インスリン欠乏 (Intra-islet insulin deficiency)
α細胞の機能不全 ( Intrinsic α cell defects)

Brissova M et al. α Cell Function and Gene Expression Are Compromised in Type 1 Diabetes. Cell Rep. 2018 Mar 6;22(10):2667-2676
1型糖尿病のα細胞で MAFB、ARX、RFX6やカルシウムチャネルの転写が低下している。膵島のグルカゴン陽性細胞はコントロールに比べ増加している。グルカゴン含量で補正したグルカゴン分泌は、グルコース300mg/dl 30分後、グルコース100 mg/dl で、コントロールに比べ反応が少ない。

Mundinger TO et al. Human Type 1 Diabetes Is Characterized by an Early, Marked, Sustained, and Islet-Selective Loss of Sympathetic Nerves. Diabetes. 2016 Aug;65(8):2322-30.
1型糖尿病の膵島で、交感神経の喪失が認められるが、2型糖尿病では認められない。
膵島での交感神経の喪失が1型糖尿病でインスリンによる低血糖の原因の一つである。

1型糖尿病のα細胞機能と遺伝子発現

ヒト1型糖尿病α細胞では、α細胞に特異的な転写因子、L型およびP/Q型カルシウムチャネルの発現が低下していた。グルカゴン陽性細胞が多いが、グルカゴン含量あたりのグルカゴン分泌反応は正常と異なる。α細胞の機能低下が1型糖尿病のグルカゴン分泌異常の原因であるかもしれない。

まとめ
ヒト1型糖尿病の膵島ではグルカゴン陽性細胞がコントロールに比べ~2倍増加している。
グルコース300mg/dl 30分後、グルコース100 mg/dl で、グルカゴン含量で補正した膵島のグルカゴン分泌はコントロールに比べ反応が少ない。

α細胞では、α細胞に特異的的なMAFB、ARX遺伝子発現は低下、通常β細胞に発現するNKX6.1遺伝子発現が増加していた。転写因子RFX6やカルシウムチャネルの転写も低下している。
RFX6はβ細胞でL型およびP/Q型カルシウムチャネル(CACNA1A、CACNA1C、CACNA1D)、KATP channel のサブユニットである sulfonylurea receptor 1 (ABCC8) の発現を制御している。 転写因子の発現低下によりグルカゴン分泌に関わる分子が抑制され、グルカゴン分泌が生じている可能性がある、

ヒト1型糖尿病の膵島で残存したβ細胞の機能は保たれている。
β細胞でPDX-1、NKX6.1、NKX2.1の発現はコントロールと同等、MAFAは低下している。
インスリン含量で補正したグルコースに対するインスリン分泌能は正常者と同等であった。

α細胞にNkx6.1 が発現していたことから、α-to-β conversion 検討するため、1型糖尿病患者の膵島を免疫不全マウスに移植した。移植後1カ月後、GLP-1アナログを注射しβ細胞の成熟と増殖を促したがヒトインスリンは検出できず。
ARX陽性細胞は増加、Nkx6.1陽性細胞は減少、Non-autoimmune environment では、α細胞のアイデンティティが回復された。ヒトの膵島で、α-to-β conversion は very rare event である。

1型糖尿病で、低血糖時のグルカゴン反応が不十分で、食事に反応したグルカゴン反応が不適当 Inappropriate である。α細胞機能障害 (intrinsic α cell defect)も原因の一つかもしれない。

Brissova M et al. α Cell Function and Gene Expression Are Compromised in Type 1 Diabetes. Cell Rep. 2018 Mar 6;22(10):‪2667-2676‬

Chandra V et al. RFX6 regulates insulin secretion by modulating Ca2+ homeostasis in human β cells. Cell Rep. 2014 Dec 24;9(6):2206-18
RFX6 は、ヒトのβ細胞でインスリン遺伝子発現とインスリン含量および分泌を制御している。
RFX6 knockdown したヒトβ細胞ではでは、P/Q calcium channel (CACNA1A)、L-type calcium channel (CACNA1C、CACNA1D) の発現が低下し、カルシウムホメオスタシスや電気的活性化が障害される。さらにグルコキナーゼ、SUR1 (ABCC1)遺伝子の発現も低下していた。

 

PDX-1遺伝子のArea IV は離乳後のPDX-1の発現を制御する。

PDX-1遺伝子の5’-flanking areaに、膵β細胞特異的な転写因子の発現を制御する部位が4カ所知られている。このうち、Area IV は離乳後のPDX-1の発現、β細胞の機能と発育に関与する。

Area IV 欠失したオスのマウスで、膵島の形成は、ほとんど影響されていないが、離乳後に PDX-1mRNA とタンパク質レベルが低下し、糖尿病を発症する。PDX-1 target genes の発現も低下する。Area IV は、離乳後のPDX-1発現を制御している。Chip assay で、PDX-1がArea IVに結合するため、Area IVがPDX-1により自己調節されている可能性がある。 

Cox AR. Kushner JA. Area IV Knockout Reveals How Pdx1 Is Regulated in Postnatal β-Cell Development. Diabetes. 2017 Nov;66(11):‪2738-2740.

Spaeth JM et al. Defining a Novel Role for the Pdx1 Transcription Factor in Islet β-Cell Maturation and Proliferation During Weaning. Diabetes. 2017 Nov;66(11):‪2830-2839

選択的GLP-1受容体抗体の作成

GLP-1 受容体の競合抗体 (competitive antagonist) Glp1R0017 は、naive phage display library から選択された。 この抗体は、生物学的半減期が12時間以上あり、GLP-1による細胞内cAMP上昇とインスリン分泌を容量依存性に抑制する。GIP、GLP2、glucagon 受容体には拮抗しない。

Exendin (Ex) 9-39 は選択的 GLP-1 受容体 アンタゴニストとして使われているが、GLP-1 (9-36)に対する拮抗作用、GIPによるcAMP上昇とインスリン分泌を抑制するなどの off-target effect がある。

1. Biggs EK et al. Development and characterisation of a novel glucagon like peptide-1 receptor antibody. Diabetologia. 2018 Mar;61(3):711-721.

2. Ban K, Kim KH, Cho CK et al (2010) Glucagon-like peptide (GLP)-1(9-36)amide-mediated cytoprotection is blocked by exendin(9-39) yet does not require the known GLP-1 receptor. Endocrinology 151:1520-1531
GLP-1(9-36) の心保護効果は、Ex(9-39)によりブロックされるが、GLP-1受容体のないマウスで保たれる。 したがって GLP-1(9-36) の心保護効果は、GLP-1受容体を介さず、Ex(9-39)には GLP-1(9-36) に対する拮抗作用があることが示された。

DPP4阻害薬、TGR5作動薬、SSTR5阻害薬、GPR40作動薬による内因性GLP-1血中濃度の増加

GLP-1作動薬や metabolic surgery でマウスのGLP-1血中濃度は~50pmol/Lに上昇する。

exenatide 投与1時間後の血中濃度の結果から、GLP-1 10-100 pmol/Lの濃度上昇により糖負荷試験では強力な血糖効果作用が認められる。

DPP4阻害薬、胆汁酸受容体 (TGR5) 作動薬、GPR40作動薬、ソマトスタチン受容体 (SSTR) 5阻害薬は、それぞれ糖負荷試験のGLP-1血中濃度を~5-30 pmol/L に上昇する。
薬剤の併用により血中GLP-1濃度は、~300から400 pmol/Lに上昇する。

糖負荷試験のactive GLP-1濃度の最大値
Sitagliptin、SSTR5 antagonist、TGR5 agonist 350 pmol/L
Sitagliptin、SSTR5 antagonist、TGR5 agonist 、GPR40 agonist 406 pmol/L
GLP-1濃度が supratherapeutic level を超えて上昇するためにはSSTR5阻害薬が必須となる。

Briere DA et al. Mechanisms to Elevate Endogenous GLP-1 Beyond Injectable GLP-1 Analogs and Metabolic Surgery. Diabetes. 2018 Feb;67(2):309-320.

α細胞のグルコキナーゼはグルカゴン分泌を制御する。

低血糖時のグルカゴン分泌は主に自律神経が関与する。
α細胞自身においてもグルカゴン分泌制御機構が存在している。

グルコースによるグルカゴン分泌抑制
グルコースによる ATP/ADP ratio 上昇
ATP-regulated K (
KATPchannel の閉鎖
膜の脱分極
Voltage-gated Na+ channel の不活化
活動電位発火 action potential firing の抑制
カルシウム流入を担うP/Q Ca2+ channel 活性の低下

α細胞のグルコキナーゼは正常血糖、高血糖でのグルカゴン分泌抑制を担っている。
α細胞特異的にグルコキナーゼをノックアウトしたマウスで、食餌後のグルカゴン値が高く、肝臓でPEPCK、G6Pの遺伝子発現が上昇し肝糖産生が増加している。
α細胞では通常、グルコース1mMに比較しグルコース 6mMでは、ATP/ADP 比が上昇、活動電位のピークが減少し、グルカゴン分泌が抑制される。
このマウスのα細胞ではATP/ADP 比の上昇が抑制され、活動電位のピークが低下せず、グルカゴン抑制が認められない。

トルブタミドは、グルコース濃度やATP/ADP比の変化と独立してKATP channel を閉鎖させる。
コントロール、ノックアウトマウスともグルコース1mMでトルブタミドによるグルカゴン分泌抑制が認められる。

Basco D et al. α-cell glucokinase suppresses glucose-regulated glucagon secretion. Nat Commun. 2018 Feb 7;9(1):546.

Rorsman P1, Ramracheya R, Rorsman NJ, Zhang Q. ATP-regulated potassium channels and voltage-gated calcium channels in pancreatic alpha and beta cells: similar functions but reciprocal effects on secretion. Diabetologia. 2014 Sep;57(9):1749-61.

核移植によるβ細胞の作成

1型糖尿病患者の線維芽細胞から核移植の手法で、β細胞の分化誘導が成功している。

線維芽細胞の核を研究用に提供された卵細胞に移植し、ES細胞を作成後、β細胞を誘導する。
この細胞は体外でまだ未成熟であるが、マウスの皮下に移植20日後、プロインスリン/インスリン比は膵島に近づき、インスリンとグルカゴンが二重陽性となる細胞はほとんど認められない。

streptozotocin 処置により、移植を行わないマウスでは高血糖となるが、皮下に作成されたβ細胞を移植したマウスでは、ヒト膵島を腎被膜下に移植したマウスと同様に正常血糖が保たれる。

Sui L et al. β-Cell Replacement in Mice Using Human Type 1 Diabetes Nuclear Transfer Embryonic Stem Cells. Diabetes. 2018 Jan;67(1):26-35.

Nishizawa M, Chonabayashi K, Nomura M, et al. Epigenetic variation between human induced pluripotent stem cell lines is an indicator of differentiation capacity. Cell Stem Cell 2016;19:341–354
iPS細胞には分化誘導が難しい細胞とES細胞のように分化する細胞がある。
iPS細胞から成熟細胞への分化能は、リプログラミング期間における DNA methylatin のパターンが影響する。

Yamada M et al. Human oocytes reprogram adult somatic nuclei of a type 1 diabetic to diploid pluripotent stem cells. Nature 2014;510:533–53

アラキドン酸の代謝産物 20-HETEは、autocrine および paracrine によりFFR1 (GPR40) を活性化する。

GPR40は、ライガンドの刺激によりPhospholypase C (PLC) を活性化する。PLC は、Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate (PIP2) を diacylglycerol (DAG) と inositol trisphosphate (IP3) に加水分解する。
IP3の増加は、ER からカルシウム誘導のトリガーとなり、インスリン小胞の開口放出が促進される。
DAG/PKC、PKD 経路もインスリン開口放出に関与する。1)

GPR40 のライガンドをスクリーニングした結果、20-hydroxyeicosatetraenoic acid (20-HETE)が見出された。FFAR1を強発現させたCOS-1細胞で、20HETE はパルミチン酸、リノール酸、α-linoleic acid よりも細胞内カルシウム濃度を増加させる。

β細胞では、グルコース濃度依存性に20-HETE が産生される。
グルコース刺激によりβ細胞内のカルシウム濃度が上昇、phospholipase A2 が活性化されリン脂質からアラキドン酸が合成される。cytochrome P450-dependent ω-hydroxylase によりアラキドン酸が 20-HETEに変換される。(論文内に図があります。)
β細胞で、20-HETE は autocrine、paracrine により GPR40を介してインスリン分泌を増強する。2)

1. Prentki M, Matschinsky F M, Madiraju SR, Metabolic signaling in fuel- induced insulin secretion. Cell Metab. 18, 162-185 (2013).
脂肪酸がインスリン分泌を増強する機構はこちら

2. Tunaru S et al. 20-HETE promotes glucose-stimulated insulin secretion in an autocrine manner through FFAR1. Nat Commun. 2018 Jan 12;9(1):177.
 

semaglutideとdulaglutide の比較試験 SUSTAIN 7

semaglutide 0.5mg 1.0mg、dulaglutide 0.75mg 1.5 mg 投与40週後、

低用量および高容量の比較で、semaglutideの方が、A1C、体重の減少量が大きい。

Dulaglutide は分子量が大きいため Blood-brain barrier を透過するとは考えられていない。一方、semaglutide による脳内GLP-1受容体の活性化がマウスで報告されている。
胃腸症状による Adverse event は2剤で同等。

心拍数の増加は、high-dose semaglutide で、high-dose dulaglutide に比べて認められる。sinoatrial node に発現するGLP-1受容体に作用するため、GLP-1作動薬で心拍数の増加が認められる。

SUSTAIN 7 trial: semaglutide versus dulaglutide once weekly in patients with type 2 diabetes

希少糖 D-alulloseは、GLP-1分泌を促進し迷走神経を介して食欲を抑制する。

日本では希少糖として知られる D-allulose が、マウスでGLP-1分泌を促進し、迷走神経を介して食欲を抑制するという報告です。糖負荷試験前のD-alluloseの経口摂取は血糖値を低下させる。インスリン負荷テスト前のD-allulose 投与では、迷走神経を介して肝糖産生抑制も認められる。他の甘味料では、Sucraloseがヒトの糖負荷試験前の摂取で血糖値が低下させGLP-1分泌を増加させると報告されている。

D-allulose はGLP-1分泌を促進する
D-allulose はマウスの摂餌量をコントロールに比べ減少させる。
D-allulose 1g/kg 経口服用後、門脈内活性型GLP-1濃度は30分後に上昇し、1から2時間でプラトーに達する。
糖負荷試験60分前に D-allulose 1g/kg 経口で投与した結果、0分の血糖値および負荷後血糖値が低下する。
高脂肪食マウスで、インスリン1.5 IU/kg 負荷では、 D-allulose 1g/kg 60分前投与により、インスリン負荷30分後の血糖値がコントロールに比べ低下する。D-allulose 経口投与後のピルビン酸負荷試験で血糖値が低下するのため、D-allulose 経口投与により肝糖産生が抑制されている。
D-allulose は、blood-brain barrier を通過しない。

sucralose は、健常者で炭水化物の存在時にGLP-1 分泌を促進する。
健常者で、sucralose 15分前に服用した後におこなった糖負荷試験では、グルコースの the total area under the curve (AUC) が生理食塩水よりも低下し、GLP-1 AUCが増加する。
aspartameではグルコースのAUCの変化はない。
2型糖尿病では、糖負荷試験前のsucralose によるグルコースの AUC低下は認めない。

1. Iwasaki Y et al. GLP-1 release and vagal afferent activation mediate the beneficial metabolic and chronotherapeutic effects of D-allulose Nat Commun. 2018 Jan 9;9(1):113. doi: 10.1038/s41467-017-02488-y.

2. Temizkan S et al. Sucralose enhances GLP-1 release and lowers blood glucose in the presence of carbohydrate in healthy subjects but not in patients with type 2 diabetes Eur J Clin Nutr. 2015 Feb;69(2):162-6. 

3. Wu T et al. Effects of different sweet preloads on incretin hormone secretion, gastric emptying, and postprandial glycemia in healthy humans. Am J Clin Nutr. 2012 Jan;95(1):78-83. 

4. Ingestion of Diet Soda Before a Glucose Load Augments Glucagon-Like Peptide-1 Secretion Diabetes Care 2009 32 (12) 2184-2186
ダイエットコーラには人工甘味料sucralose、acesulfame-Kが含まれていて、糖負荷試験10分前にダイエットコーラ240mlを飲ませたところ、血糖値に差はないが、GLP-1のarea under the curve (AUC) は増加した

ピルビン酸キナーゼ M2の活性化による腎保護作用

糖尿病歴50年以上で腎症を発症しない患者のブロテオミックス解析結果で、解糖系、ソルビトール、methylglyoxal (MG) の代謝酵素が増加している。
ソルビトール、MG、diacylglycerol は、toxic glucose metabolitesとして知られている。Methylglyoxal は、advanced glycation end products (AGEs) の前駆体である。

pyruvate kinase M2 (PKM2) は、ペプチドレベルでコントロールに比べ 2.7倍に増加、PKM2 ペプチドレベルと eGFRに相関を認めた。
PKM2の活性化は、グルコース代謝の促進、toxic metabolitesの産生阻害により、ミトコンドリア生合成(mitochondrial biogenesis) を増加させミトコンドリア機能を回復させる。

Qi W et al. Pyruvate kinase M2 activation may protect against the progression of diabetic glomerular pathology and mitochondrial dysfunction Nat Med. 2017 Jun;23(6):753-762.

DPP4阻害薬と創傷治癒 (wound healing)

DPP4阻害薬はケラチノサイトのepithelial-mesenchymal transition を誘導し創傷治癒を促進する。

NRF2と創傷治癒
NRF2 (nuclear factor-E2-related factor 2)は、抗酸化作用を促進し、reactive oxygen species の産生を抑制する。keap1はactin-binding cytoplasmic proteinで、通常状態では、NRF2と結合してNRF2を細胞質にとどめている。高血糖下では、NRF2の核内移行が抑制されている。
糖尿病潰瘍の病変周辺部では、酸化ストレスが増加している。
keap1の抑制による酸化ストレス改善は線維芽細胞の再生能 regenerative capacity を増加させる。1)
薬理学的にNRF2を活性化する sulforaphane、cinnamaldehyde が糖尿病マウスで創傷治癒 wound closure を促進した。2)

DPP4阻害薬はNRF2とは別の経路で創傷治癒を促進する。
DPP4阻害薬はNRF2を活性化するためNRF2を介して糖尿病マウスの創傷治癒と促すと考えられていた。予想に反し、NRF2を発現しないマウスでDPP4阻害薬が創傷治癒を促進することから、NRF2以外の経路も重要であることが明らかになった。
DPP4阻害薬を添加したケラチノサイトで、E-cadherin (上皮細胞マーカー)が減少、vimentin、snail が増加する。DPP4阻害薬はケラチノサイトのepithelial-mesenchymal transition (EMT) を直接促進する。
さらにDPP4阻害薬は、線維芽細胞のSDF-1α産生を促進する。SDF-1αはケラチノサイトのEMTを誘導する。
糖尿病マウスの皮膚病変においても、DPP4阻害薬によりSDF-1αが増加し、EMTがみとめられる。3)

DPP4阻害薬と腫瘍転移のリスク
ROSの減少は、遊走能を促進し、腫瘍の転移能を増加させる。
Wang らは、α-linoleic acid (ALA)による抗酸化作用、あるいはシタグリプチンやサクサグリプチンによるNRF2 の活性化が、xenograft mouse model で腫瘍転移のリスク増加を示した。4, 5)

1. Soares MA et al. Restoration of Nrf2 Signaling Normalizes the Regenerative Niche. Diabetes. 2016 Mar;65(3):633-46.

2. Long M et al. An Essential Role of NRF2 in Diabetic Wound Healing. Diabetes. 2016 Mar;65(3):780-93.

3. Long M et al. DPP-4 Inhibitors Improve Diabetic Wound Healing via Direct and Indirect Promotion of Epithelial-Mesenchymal Transition and Reduction of Scarring Diabetes. 2017 Dec 18. pii: db170934.

4. Tschöp MH et al. Opposing Effects of Antidiabetic Interventions on Malignant Growth and Metastasis. Cell Metab. 2016 Jun 14;23(6):959-960

5. Wang H et al. NRF2 activation by antioxidant antidiabetic agents accelerates tumor metastasis. Sci Transl Med. 2016 Apr 13;8(334):334ra51.


CRISPR-Casによるブタレトロウイルスの不活化

ヒトへの移植でブタの臓器を使う場合、ブタのウイルスがレシピエントにも影響することが懸念されている。CRISPR-Cas の技術によりDNAに組み込まれたレトロウイルスが不活化されたブタがすでに得られている。

まとめ
ブタ胎児線維芽細胞 embryonic fibroblast あるいは胎児線維芽細胞 Fetal fibroblast で、CRISPR (clustered regulatory interspaced short palindromic repeats) -Cas technologyにより、DNAに組み込まれたレトロウイルス を不活化した。
レトロウイルスを不活化したブタの細胞核をブタの胚 embryo に核移植し、代理母となるブタの子宮に生着 implantationさせた。
その結果、これまで知られている全てのブタレトロウイスが不活化されたブタが得られている。
E型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、Porcine circovirus についてはまだ未解決である。

Denner J. Paving the Path toward Porcine Organs for Transplantation. N Engl J Med. 2017 Nov 9;377(19):1891-1893

日経新聞の記事(有料会員限定)
「臓器工場」実現なるか 東大など、種類違うネズミで成功 人向け、技術の壁高く 倫理面でも課題

糖尿病性網膜症のフォローアップ間隔

DCCT/EDICのフォローアップスタディの結果
網膜症の悪化はAICと相関する。
増殖性網膜症あるいは黄斑浮腫のリスクは以下の網膜症スクリーニング期間では5%程度である。

網膜症なし 4年
Mild retinopathy 3年
Moderate retinopathy 6ヶ月
Sever non proliferative retinopathy 3ヶ月

editorial では、
網膜症がない場合、3−4年の網膜症スクリーニングとすることで医療費削減の可能性に言及している。
DCCT/EDIC では、増殖性網膜症、黄斑浮腫を悪化の指標としている。
DCCT/EDIC以後に開発された抗VGEF 抗体治療は、retinal perfusion を増加させる。
今後、retinal non-perfusion area のイメージングが汎用化した場合、スクリーニングアルゴリズムや間隔に影響するだろうとしています。

The DCCT/EDIC Research Group. Frequency of Evidence-Based Screening for Retinopathy in Type 1 Diabetes N Engl J Med 2017; 376:1507-1516 April 20, 2017

Rosenberg JB, Tsui I. Screening for Diabetic Retinopathy. N Engl J Med. 2017 Apr 20;376(16):1587-1588.

Levin AM et al. Retinal reperfusion in diabetic retinopathy following treatment with anti-VEGF intravitreal injections. Clin Ophthalmol. 2017 Jan 21;11:193-200.


心筋のGIP受容体シグナリングは脂質代謝を制御する。

GIP受容体は心房および心室に、GLP-1受容体は主に心房に発現している。

GIP受容体シグナリングは心臓の脂質代謝を制御している。
GIP受容体の活性化は、心筋の脂肪酸酸化を増加させる。
GIP受容体の除去は、hormone sensitive lipase (HSL) phosphorylation を減少させ、心筋で中性脂肪蓄積が増加する。

GIP受容体を除去したマウスで、心筋梗塞による心筋障害が軽減される。
高血糖下では、心筋エネルギー代謝の25%がTAG蓄積から得られており、心筋の中性脂肪蓄積増加により、心筋梗塞時の心筋が保護される。

Inactivation of the Glucose-Dependent Insulinotropic Polypeptide Receptor Improves Outcomes following Experimental Myocardial Infarction

リラグルチドはアルツハイマー病でBBBのグルコース輸送能を改善する。

Blood-brain barrier (BBB)では、Astrocyte と微小血管に発現するGLUT1が主な役割をはたす。
Neuron にはGLUT3が発現する。

アルツハイマー病患者リラグルチド18人プラセボ20人の比較試験
アルツハイマー病では、罹病間が長いほどBBBのグルコース輸送能 (brain glucose transfer capacity, Tmax) は低下している。
Cerebral metabolic rate for glucose は認知機能と正の相関を示す。

リラグルチド投与6ヶ月後、プラセボに比べ脳皮質のTmaxは上昇し、healthy volunteer と同等となった。

リラグルチドが、Transporter の密度 (density) 、基質への親和性を変化させる、あるいは BBBでグルコースの gradient 変え、Tmaxを改善すると考えられている。

Gejl M et al. Blood-Brain Glucose Transfer in Alzheimer’s disease: Effect of GLP-1 Analog Treatment. Sci Rep. 2017 Dec 13;7(1):17490

プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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