腸管の糖新生

腸管では主にグルタミンを基質として糖新生が行われている。
Glutamate-pyruvate transaminase (別名 alanine transaminase)
グルタミン+ピルビン酸→ α-ケトグルタル酸 +アラニン
グルタミンの3つの炭素がα-ケトグルタル酸 に変換される。

門脈のグルコース上昇シグナルは、内臓神経を介してparabrachial nucleus に到達する。その結果、中枢神経を介して、摂食の抑制、脂肪蓄積の抑制、肝臓および全身性のインスリン抵抗性改善効果が認められる。
短鎖脂肪酸のうち、butyrate とpropionate は、cAMP上昇により腸管糖新生に関わる遺伝子発現を増加させる。propionate とsuccinate は糖新生の基質となる。
タンパク質と水溶性食物線維は腸管糖新生を刺激する。

Soty M at al. Gut-Brain Glucose Signaling in Energy Homeostasis. Cell Metab. 2017 Jun 6;25(6):1231-1242.

腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸は、腸管の糖新生を誘導し、肝糖産生を低下させる。

メトフォルミンと腸内細菌

mTORのまとめ

今年のラスカー賞は、mTOR を見出したバーゼル大学のMichael N. Hall 先生に贈られます。

mTORのまとめ
ラパマイシンは、1970年代初期にイースター島(現地名 Rapa Nui) の土壌の細菌より見出された。この薬剤は哺乳類のがん細胞、免疫細胞の増殖を抑制する。

ラパマイシン (sirolimus)とFK506 (tacrolimus) は、ともにFK506-binding protein (FKBP12) に対するbinding site をもつ。ラパマイシンによるT細胞活性化の抑制は、FKBP12への結合に依存していた。

Hall らは、出芽酵母のラパマイシン耐性株 (rapamycin-resistant mutants) からmTOR1、mTOR2を見出した。このミュータントは、mTOR FKBP12-rapamycin binding 部位の single codon の変異を有していた。
さらに Hall らは、mTOR がタンパク質合成を制御することにより細胞の生長に関与するエビデンスを示している。

Manning BD. Game of TOR - The Target of Rapamycin Rules Four Kingdoms. N Engl J Med. 2017 Sep 28;377(13):1297-9

Blenis J. TOR, the Gateway to Cellular Metabolism, Cell Growth, and Disease. Cell. 2017 Sep 21;171(1):10-13

CETP inhibitor Anacetrapib はスタチンと併用で心血管イベントを抑制する。

アトルバスタチン服用でLDLコレステロール77mg/dl未満の患者に、Cholesteryl ester transfer protein (CETP) inhibitor Anacetrapibあるいはプラセボを上乗せ
フォローアップ4.1年で、Anacetrapib群ではプライマリーアウトカムが少ない。(10.8% vs. 11.8%)

HDLコレステロールはプラセボに比べ43mg/dl上昇、LDLコレステロールは26mg/dl低下する。
イベントの低下はHDLの上昇よりもLDLの低下による。

Editorial では、”Lower LDL is better, and lowest is best.” がが信ぴょう性のある原則となりつつあるとしている。

Bowman L et al. Effects of Anacetrapib in Patients with Atherosclerotic Vascular Disease. N Engl J Med. 2017 Sep 28;377(13):1217-1227.

Hegele RA. CETP Inhibitors - A New Inning? N Engl J Med. 2017 Sep 28;377(13):1284-1285.

1型糖尿病とSGLT2LT阻害薬

1型糖尿病で、sotagliflozin とプラセボを比較、
プライマリーエンドポイントは24週時のA1C7.0%未満の達成率
登録者の71%がBMI 25以上であった。

sotagliflozin 群では、プラセボの約2倍の患者でA1C 7.0%未満を達成した。
(28.6% vs. 15.2%)
体重と血圧が低下し、総インスリン量が減量される。
尿アルブミンクレアチン比は有意差なし

ケトアシドーシスの発症率は、sotagliflozin 3.0%、プラセボ 0.6%
sotagliflozin では、下痢、Genital mycotic infection がプラセボより増加する。

Nathan DM. Adjunctive Treatments for Type 1 Diabetes N Engl J Med. 2017 Sep 13. 

Garg SK et al.  Effects of Sotagliflozin Added to Insulin in Patients with Type 1 Diabetes N Engl J Med. 2017 Sep 13. 

耐糖能異常でアカルボースは心血管イベントを抑制しない。

耐糖能異常と心血管イベントリスクのある患者にアカルボースを投与、5年のフォローアップの結果

・STOP-NIDDMで認められた2型糖尿病発症抑制は確認された。(4.4年で18%抑制)
・cardiovascular event の抑制効果は認められなかった。

ライフスタイル介入、メトフォルミン、チアゾリジンで、2型糖尿病の発症抑制が報告されている。

Nauck MA, Meier JJ. Break point instead of ACE: acarbose, post-load glycaemic excursions, and cardiovascularevents. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Sep 12. pii: S2213-8587(17)30318-2. 

Holman RR et al. Effects of acarbose on cardiovascular and diabetes outcomes in patients with coronary heart disease and impaired glucose tolerance (ACE): a randomised, double-blind, placebo-controlledtrial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Sep 12. pii: S2213-8587(17)30309-1.

デグルデックとグラルギンの比較試験

 デグルデックとグラルギンの比較、24ヶ月後、両群でA1C7.5%、
Cardiovascular outcome は同等、デグルデックで、空腹時血糖が低く、低血糖が少ない。

Marso SP et al. Efficacy and Safety of Degludec versus Glargine in Type 2 Diabetes N Engl J Med. 2017 Aug 24;377(8):723-732. 

1型糖尿病妊婦のCGMは新生児のhealth care outcomeを改善する。

1型糖尿病妊婦のCGM 群とコントロール (masked sensor) の比較、母親の血糖値はより長く正常域に入り、新生児低血糖、NICU入室、児の入院期間が少ない。

まとめ
1型糖尿病妊婦のCGM 群とコントロール(masked sensor) の比較、primary endpointはランダム化から妊娠34週のA1Cの変化、secondary endpointは
両群とも食事前後、就寝前血糖測定を行う。

母親で
妊娠34週時、血糖値63-140 mg/dl に入る時間が長い。
ランダム化から妊娠34週のA1Cの変化は、home glucose monitoring 比べわずかに低下

新生児で
Large for gestational date の減少
NICUへ24時間以上の入室率の低下
低血糖の減少
入院期間1日短縮
が認められた。

Continuous glucose monitoring in pregnant women with type 1 diabetes (CONCEPTT): a multicentre international randomised controlled trial
 

運動中及び運動後のClosed-loopの実績

運動時のClosed-loopの使用成績、運動後の血糖値はopen-loop に比べ、血糖値70-180 mg/dl に入る時間が長い。

まとめ
病院内で、運動強度 55% of V O2max あるいは55% VO2 max と80%VO2maxの組み合わせで約40分間の運動を行う。

運動中は15分ごと、運動後2時間は30分ごとの採血、運動後4時間はbasal insulin を20%減量する。
運動を行う日の15時から翌日13時までClosed-loopでインスリンを投与し、運動は16:30 から 19:30 の間に開始する。
ソフトウエアは、laptop/tablet computer (ThinkPad) に搭載されている。

プライマリーエンドポイントである血糖値60 mg/dl 未満の時間は有意差なし。
Closed-loop では、血糖値70-180 mg/dl に入る時間が長い。
運動のプロトコールにかかわらず夜間血糖値は、93%の時間で血糖値70-180 mg/dl にはいっていた。

Closed-loop glucose control in young people with type 1 diabetes during and after unannounced physical activity: a randomised controlled crossover trial

1型糖尿病の膵臓でプロインスリンはタンパパクレベルで検出される。

1型糖尿病患者の膵臓で、インスリンとCペプチドはほとんど検出できないが、プロインスリンはタンパクベルで検出できる。 インスリンmRNAも認められる。

インスリン遺伝子の転写の際にみとめられる INS-IGF2のmRNAや、heterogenous nuclear RNAは検出されないため、インスリンプロモーターは silent な状態である。

インスリンは、プロインスリンからPCSK1、PCSK2、CPEにより生成される。
グルカゴンは、α細胞でPCSK2、CPEにより生成される。PCSK1は、α細胞には存在しない
1型糖尿病患者の膵臓で、PCSK1は低下、PCSK2とCPEは有意差なし。
PCSK1の低下はプロインスリンの存在を支持する結果である。

Persistence of Pancreatic Insulin mRNA Expression and Proinsulin Protein in Type 1 Diabetes Pancreata

リラグルチドはアルブミン尿を抑制する。

LEADER試験のsecondary renal outcomeの解析結果で、リラグルチド群では、macroalbuminuria の出現率が少ないため、3.84年のフォローアップでプラセボに比べ composite renal outcome 22%減少が認められた。
New onset of persistent macroalbuminuria のハザード比 0.74

Persistent doubling of serum creatinine
Renal-replacement therapy
Death due to renal disease は有意差なし。
尿アルブミンクレアチニン比は、36カ月でプラセボに比べ83%  (estimated trial group ratio 0.83)

GFR 低下量は有意差なく、GFR 60 ml/min/1.73m2 以上あるいはGFR 30 ml/min/1.73m2 未満で検討しても結果は変わらない。
GLP-1作動薬による GFR decline 抑制のエビデンスは限られている。

ベースラインのHbA1C、血圧、体重で補正しても、renal outcome 減少は認められる。
Semaglutideを使ったSUSTAIN試験では、プラセボに比べ、composite renal outcome 36% 減少が報告された。
腎保護作用の要因として、Inflammation や oxidative  stress の改善が想定されている。

Mann JFE et al. Liraglutide and Renal Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2017 Aug 31;377(9):839-848.

de Boer IH. A New Chapter for Diabetic Kidney Disease. N Engl J Med. 2017 Aug 31;377(9):885-887. 

GLP-1はソマトスタチン分泌を介してグルカゴン分泌を抑制する。

GLP-1受容体作動薬では低血糖が少ないため、GLP-1が低血糖ではグルカゴン分泌を抑制しないという仮説が建てられていた。 予想に反して、マウスの膵臓韓流実験で、GLP-1は低グルコース濃度でもソマトスタチン分泌を促進しグルカゴン分泌を抑制した。

まとめ
GLP-1はグルカゴン分泌を抑制するが、GLP-1受容体作動薬では低血糖は起こりにくい。
インスリン、ソマトスタチンは、グルカゴン分泌を抑制する。
GLP-1が低グルコース濃度で、ソマトスタチン分泌を促進せず、グルカゴン分泌抑制しないという仮説をたてていた。

予想に反し、膵臓灌流実験の低グルコース濃度 (9 mg/dl、27 mg/dl) でも、GLP-1はソマトスタチン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制した。
GLP-1によるグルカゴン分泌抑制は、somatostatin receptor 2 (SSTR2) 阻害薬により解除される。

GLP-1は、インスリン分泌を1.5 mM グルコースでは促進せず、6 mMグルコースで促進する。

ソマトスタチン分泌 somatostatin tone は神経支配を受けている。
膵臓灌流モデルでは神経が切除されるため、ソマトスタチンが低グルコース濃度でも分泌された可能性がある。1) 

Rorsmanらのグループは、GLP-1のα細胞に対する直接作用を報告し、GLP-1のグルカゴン分泌抑制にソマトスタチンは関与しないとしている 。
2, 3)
・α細胞にGLP-1受容体が発現しているが、β細胞の発現量の0.2%程度と少ない。
・グルカゴン分泌はGLP-1で抑制され、アドレナリンで促進される。cAMPのわずかな上昇はグルカゴン分泌を抑制し、大幅な上昇はグルカゴン分泌を促進する。
・膵島をGLP-1で1時間培養後、ソマトスタチン分泌は刺激されず、SSTR2阻害薬は、GLP-1のグルカゴン分泌抑制に影響しない。2)

1) Ørgaard A. Holst JJ. The role of somatostatin in GLP-1-induced inhibition of glucagon secretion in mice. Diabetologia. 2017 May 27.

2) De Marinis YZ et al. GLP-1 inhibits and adrenaline stimulates glucagon release by differential modulation of N- and L-type Ca2+ channel-dependent exocytosis. Cell Metab. 2010 Jun 9;11(6):543-553.

3) Zhang Q et al. Role of KATP channels in glucose-regulated glucagon secretion and impaired counterregulation in type 2 diabetes. Cell Metab. 2013 Dec 3;18(6):871-82.  

GLP-1の神経保護作用(neuroprotective and neurorestorative effect)

2013年 open-label study で、エクゼナチド12ヶ月投与が、コントローに比べ、パーキンソン病のスコアMDS-UPDRS part 3 off-medication scoreを改善させたと報告された。1)

今回、randomised, double-blind, placebo-controlled trial で、エクゼナチド2mg 週1回、48週間投与後、12週間 wash out し、プラセボと
パーキンソン病のスコアを比較した。
エクゼナチド群で、60週後、MDS-UPDRS part 3  off-medication score が1.0ポイント改善、プラセボ群で、2.1ポイント悪化

他のスコアおよび MDS-UPDRSの1−4のパート(on-medication state) では有意差なし。

エクゼナチドは、blood-brain  barrier を通過する。(エクゼナチド群のピーク血中濃度 543·3 pg/ml、48週時の髄液濃度中央値11·7 pg/mL)

1) Aviles-Olmos I, Dickson J, Kefalopoulou Z, et al. Exenatide and the treatment of patients with Parkinson’s disease. J Clin Invest 2013; 123: 2730–36.

2) Athauda D et al. Exenatide once weekly versus placebo in Parkinson's disease: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2017 Aug 3. pii: S0140-6736(17)31585-4. 


代謝変化に対するサル膵島の血流は毛細血管拡張と収縮で調節されている

 サルの膵島を眼房に同種移植しmultiphoton imaging で血流を可視化した。
膵島は虹彩上に着床して虹彩の血管から血流を受ける。

サルの膵島では、グルコースや GLP-1刺激により血流動態や速度は変化しない。
代謝変化に対して膵血流は毛細血管の拡張と収縮により調節されている。

一方、マウスの膵島では、グルコースや GLP-1刺激により、膵島の血流速度とperfusion volume が増加する。

Juan A. Diez et al. Pancreatic Islet Blood Flow Dynamics in Primates Cell Rep. 2017 Aug 8;20(6):1490-1501. doi: 10.1016/j.celrep.2017.07.039.

食後のグルカゴンの反応は炭水化物の含有量により異なる。

食後のグルカゴンの反応は炭水化物の含有量により異なる。

食事中の炭水化物量が多い場合、インスリンの上昇が大きく、グルカゴンの上昇は小さい。

炭水化物が少なければ、グルカゴン上昇が大きい。グルカゴン上昇により、肝糖産生が上昇し、protein-induced insulin secretion による低血糖を防ぐ1)。

"The response of glucagon during a meal  varies with the amount of carbohydrates consumed.  The greater carbohydrate content, the greater rise of insulin and the smaller rise in glucagon levels; this bihormonal mixture favors the hepatic accumulation of ingested glucose.  If the meal is devoid of carbohydrate, however, a large rise in glucagon secretion occurs and, by enhancing hepatic glucose production, prevents hypoglycemia arising from protein induced insulin secretion.”
  
1) Unger RH, Orci L. Glucagon and the A cell: physiology and pathophysiology (first two parts). N Engl J Med. 1981 Jun 18;304(25):1518-24.

ViaCyte 社の治験 2017年

アメリカとカナダでは幹細胞から誘導したβ細胞をカプセルに入れ皮下に移植する治験が開始となっている。

ViaCyte 社の第一世代の移植システム(VC-01 あるいはPEC-Encap)による治験では、何らかの免疫細胞によりデバイス周囲の血管新生が不十分とり、デバイスの改良のため2014年より開始されていた治験は約24ヶ月で終了となった。1)

2017年8月1日、ViaCyte 社は第二世代の移植システム(VC-02あるいはPEC-Direct)を用いた治験第一例の移植を公表した。

PEC-Directでは、カプセルの中まで毛細血管が入り込める構造になっている。このため血管からインスリン産生細胞へ酸素や栄養素の供給が可能となる。

ViaCyte 社は、治療開始6ヶ月から12カ月後の安全性と有効性を報告する予定としており、2018年の前半に結果が明らかとなる。
有効性の評価 Efficacy measurement は、血中C-peptide値、インスリン必要量、低血糖の頻度による。

無自覚低血糖のある1型糖尿病患者では、生命をおびやかす低血糖のリスクにさらされている。
この治験は、無自覚低血糖や血糖値の不安定性、重症低血糖の既往のある患者が対象となる。

1) Biotech Startups’ Cell-Based Diabetes Attack (WSJの記事)

わかりやすい図があります。

2) ViaCyte treats first patients in PEC-Direct stem cell trial for type 1 diabetes

3) ViaCyte Announces First Patients Implanted with PEC-Direct Islet Cell Replacement Therapy in International Clinical Trial

4) Vacate Announces First Patients Implanted with PEC-Direct Islet Cell Replacement Therapy in International Clinical Trial (Viacyte社のホームページ)

ヒト腸管L細胞のGLP-1分泌

ヒト十二指腸、空腸のL細胞はグルコースに反応しGLP-1を分泌する。大腸のL細胞はグルコースに反応しない。

SGLT2阻害薬、GLUT2 阻害薬ともにグルコース刺激GLP-1分泌を抑制する。

Voltage-gated Na+ channel blocker、L-type calcium channel blocker はグルコース刺激GLP-1分泌を抑制する・

Tolbutamide は、GLP-1分泌を刺激しない。KATPチャネルはグルコース刺激GLP-1分泌を駆動しない。

SucroseもGLP-1分泌を刺激するため、sweet taste receptor (STR) もGLP-1分泌に関与している。
STR阻害剤の存在下でグルコース刺激GLP-1分泌は保たれるため、グルコース刺激GLP-1分泌は、STR経路とは独立している。

Sun EW et al. Mechanisms Controlling Glucose-Induced GLP-1 Secretion in Human Small Intestine. Diabetes. 2017 Aug;66(8):2144-2149. 

腸内細菌の変化がGLP-1によるNO産生を抑制する

高脂肪食による腸内細菌の変化が、GLP-1によるNO産生を抑制しgut-brain axisを変化させる。
高脂肪食マウスの腸管ニューロンで、GLP-1受容体および、neuronal nitric oxide synthase (nNOS) のmRNA発現が低下する。

まとめ
高脂肪高炭水化物食で肥満となるが、高脂肪食単独のマウスの体重は、通常食マウスと同等であった。
高脂肪食のマウスでは、通常食に比べ、糖負荷試験で門脈中のGLP-1が増加するがインスリン分泌は低く、GLP-1抵抗性がみとめられた。
通常食では、GLP-1刺激によりthe nucleus of the tracts やthe dorsal vagal nucleus のcFos の発現が認められる。
高脂肪食ではGLP-1刺激によるcFos の増加が認められられなくなるなど、腸管神経系 (enteric nervous system) が変化している。

高脂肪食マウスの腸管ニューロンで、GLP-1受容体および、neuronal nitric synthase (nNOS) のmRNA発現が低下する。

高脂肪食後の腸内細菌の遺伝子解析では、核酸とアミノ酸代謝に関与する遺伝子が増加、Nitrate reduction (nitrate → ammonia) に関与する遺伝子が豊富となる。
高脂肪食による腸管細菌変化が、腸管ニューロンで GLP-1によるNO産生を抑制、求心性迷走神経活性を低下させる。

Grasset E, Puel A, Charpentier J, Collet X, Christensen JE, Tercé F, Burcelin R. A Specific Gut Microbiota Dysbiosis of Type 2 Diabetic Mice Induces GLP-1 Resistance through an Enteric NO-Dependent and Gut-Brain Axis Mechanism. Cell Metab. 2017 Jul 5;26(1):278.

Claus SP. Will Gut Microbiota Help Design the Next Generation of GLP-1-Based Therapies for Type 2 Diabetes? Cell Metab. 2017 Jul 5;26(1):6-7.

SGLT2阻害薬の尿糖排泄域値とSGLT1による代償

 糖尿病では、maximal renal glucose transport (TmG)が上昇する。SGLT2阻害薬は、糖尿病及び非糖尿病者の
TmG を低下させる。

Empagliflozinは、尿糖排泄域値を血糖値40mg/dlまで低下させる。生理的に正常な血糖値以下でも尿糖が排泄される。
ベースラインのTmGは、SGLT1とSGLT2のTmG を反映し、Empagliflozin服用14日後のTmGは、SGLT1のTmGを反映する。

         TmGベースライン    Empagliflozin服用14日後の減少率
2型糖尿病患者   459 ± 53 mg/min   65 ± 5 %
非糖尿病                337 ± 25 mg/min         75 ± 3%

Empagliflozinによる尿糖排泄効果の約30%は、SGLT1により代償されている。

Al-Jobori Het al. Empagliflozin and Kinetics of Renal Glucose Transport in Healthy Individuals and Individuals With Type 2 Diabetes.  Diabetes. 2017 Jul;66(7):1999-2006. doi: 10.2337/db17-0100. Epub 2017 Apr 20.

GABAとα細胞

GABA受容体活性化により、β細胞でクロライドが流出、α細胞でクロライドが流入する。
TypeA GABA受容体 (GABAAR) は、α細胞、β細胞ともに発現している。
他のクロライド流入型 (chloride-intruding)、クロライド排出型 (chloride-extruding)トランスポーターの発現の違いから、細胞内クロライド濃度は、β細胞で高く、α細胞では低い。
GABAARの活性化により、β細胞でクロライドが流出し、細胞膜の脱分極によりカルシウムが流入、インスリン分泌が促進される。
α細胞では、GABAARの活性化により、クロライドが流入し、膜の過分極によりカルシウム流入が抑制され、グルカゴン分泌が低下する。1)

インスリンはGABAARのトランスロケーションを介してグルカゴン分泌を抑制する。
インスリンは、α細胞で、インスリン受容体を介してAktを活性化し、GABAAR を細胞膜にトランスロケーションさせる。インスリンはGABAAR 活性化によりグルカゴン分泌を抑制する。2)

1型糖尿病モデルマウスでは、GABAシグナルが低下、mTORが活性化するため、α細胞が増殖する。
STZ処置したマウスのβ細胞で、GADとGABARの発現が低下、α細胞ではGABARの発現は低下しない。
β細胞から分泌されるGABAが低下するため、GABA受容体を介したCl-の流入が減少、Ca2+の流入が増加、mTORが活性化し、α細胞が増殖する。
STZ処置マウスへのGABA投与は、α細胞の細胞質内カルシウム濃度とp-mTOR 活性を低下させ、STZ処置後のα細胞の増殖を抑制する。

1) Feng Alte al. Paracrine GABA and insulin regulate pancreatic alpha cell proliferation in a mouse model of type 1 diabetes Diabetologia. 2017 Jun;60(6):1033-1042. doi: 10.1007/s00125-017-4239-x. 

2) Xu E, Kumar M, Zhang Y, Ju W, Obata T, Zhang N, Liu S, Wendt A, Deng S, Ebina Y, Wheeler MB, Braun M, Wang Q. Intra-islet insulin suppresses glucagon release via GABA-GABAA receptor system.Cell Metab. 2006 Jan;3(1):47-58.


プロフィール

N. Ishizuka

Author:N. Ishizuka
糖尿病専門医です。インスリン分泌の基礎研究を経て臨床に戻りました。これまで読んだ論文を臨床に生かしていこうと思い、ブログ形式でまとめています。

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